2017年7月12日水曜日

先月の一本 ぐわんげ

今月…では無く先月はこれです。実を言うと今月用に書いてたやつの方が先に書き上がったからこっちを先に、というわけなんだけども。元先月用に書いてたものは現在ちょこちょこ見直し中。
いささか古い作品ではあるものの全く色あせていない魅力的なSTGでもあります。ケイブSTGの中ではOne互換にも対応しているので興味のある方は是非とも。
��____

DATA
発売 / 開発 :アトラス(AC)、ケイブ(Xbox360) / ケイブ
登場時期 : 1999(AC)/2010(Xbox360)
ジャンル : 縦スクロール弾幕STG
機種 : AC/Xbox360



��異端なSTG~
「ぐわんげ」である。まずタイトルがすごい。一見しただけでは何が何だか分からない。ケイブの前身である東亜プランも「達人王」「ドギューン!!」「鮫!鮫!鮫!」など何が何だか分からないタイトルのSTGを輩出し、ケイブ自身も「怒首領蜂」と書いて「どどんぱち」と読ませるセンスを持っていたが、東亜の流れから見てもケイブのセンスから見てもどことなく異端なセンスのタイトルである。ちなみに当初のタイトルは「ずずり」だったらしい。……こちらも分からん……
次に目につくのが和を基調とした世界観。ケイブの中では、というよりもSTGの中から見ても非常に珍しい設定である。和を題材としたSTGとしては彩京の「戦国エース」などがあるがあれは純和風ではなくむしろ和を軸に色々なものをぶち込み生まれた混沌としたものであった。そこへ行くと「ぐわんげ」は室町時代であり、機械などのオーバーテクノロジーは一切出て来ず、戦車や砲台こそ存在すれど木造という世界観への凝り具合が非常に強い。
更にシステム面もかなり独特。ケイブ恒例の広範囲へのショット、狭範囲だが超火力のレーザーという攻撃手段はあるもののレーザーに該当する式神が他のケイブSTGや他のSTGでも見たことのないタイプであること、そして体力制と残機制を組み合わせたようなシステムなど異端な点が非常に多い。
そう、「ぐわんげ」を一言でいうならば異端なSTGなのである。その斬新で異質な内容は今見ても新鮮に感じるほど色あせていない。細部まで拘り抜かれた作り込みと適切な難しさの難易度調整を成し遂げた異端な良作弾幕STGである。非常にクセこそ強いものの惹かれる要素を多数持ち合わせる「ぐわんげ」の世界へ、いざ!出立!

��お命頂戴!システムを理解せよ!~
先述したとおり自機を動かしショットと式神を使い分け要所要所でボムを撃つのが基本的な流れなのだがこのショットと式神のうち式神の操作が極めて重要。式神は簡単に言えば式神のいる位置に高火力の攻撃を叩き込むというものであり、敵にダメージを与えるだけでなく式神を敵弾に当てることで弾の速度を減速させることができる。減速した弾は色が青からピンクへと変化し、式神から弾が離れると加速し色も青へと戻る。またピンク弾は敵を倒すことで消滅させることが可能。これにより弾幕STGでありながらも敵弾の大多数を掻き消して無力化して進むことができるのである。更に式神起動中は喰らうダメージが通常よりも半減される。更に式神は地形を無視して移動させることが可能なので、地形を挟んだ向こう側の敵に攻撃を与えることもできるのである。
こうしてみると非常に強力で実際強力なのだが、そう簡単にいかないのがぐわんげのぐわんげたる所。まず式神起動中は自機の操作が大きく制限され、縦方向への移動は不可能になり横方向への移動スピードが大幅に下がる。そして何より式神を動かそうとすると自機も動かざるを得ない自機と式神は一心同体なシステムだろう。式神を狙ったところへ置きつつさらに自機の安全を確保するためにはかなりの慣れを要する。自機の安全を最優先で確保しようとすると式神が明後日の方向へ飛んで行ってしまい……なんてことも起こる。操作がかなり独特なため慣れないうちはケイブSTGの中でもかなり難しく思えてしまうだろう。そうでありながら弾幕は割と激しめであり、さらには高速弾を吐いてくる敵も結構多いということや、地形の制限が厳しいということもあり敷居はかなり高いゲームかもしれない。
しかし、ぐわんげに対する理解が進むと自然に先へ進めるようになるというこの絶妙なバランスがぐわんげの魅力でもある。実際今作はケイブSTGの中でも難易度は低めであり、それでいて「先へ進めたけどなんで先へ進めたか分からない……」というようなバランスでもない巧みな調整が効いている作品でもある。
STGの基本はパターン化に加えて「やられる前にやる」というものであり、敵配置を覚えての問答無用で即破壊することが重要だがぐわんげはそこに至るまでのハードルを下げているのがポイント。基本的には「敵が見えたら式神を重ねる」、これだけで大幅に進みやすくなるのだ。弾を撃たれても式神を重ねることで減速化、そして減速した弾は敵の破壊で消滅させることで弾避けがほぼ不要、といった具合に進めるうえでの方針が明解で分かりやすく、高度なテクニックも必要とされない、という意味で非常にやさしいSTGである。また、STGの肝である弾避けに関しても式神で弾を止めている間に空いている空間に移動すれば良いという点で非常に分かりやすく、加えて体力制採用ということもあり多少被弾しても問題ないというところも非常に親切。ストイックなゲームが多いSTGの中でこのやさしさ溢れる作りが非常に素晴らしい限り。だからと言って簡単ではない、しかし理不尽ではない難易度調整も素晴らしく初心者でもクリアに到達しやすい作品だと思える。また、回復アイテムが大量に供給される点も、頑張ればクリアできるかも!?という気にさせてくれる親切な作りである。回復アイテムと体力制のシステムを理解してパターンを組めばクリアできる日も近い、はず。無理せず要所要所でボムを撃て、とだけ言っておこう。
ぐわんげの作りはこのシステムへの理解を軸に構成されており道中の難所ではしっかりとした理解を求めてくる。反面アドリブや数ドット単位の弾避けは全く存在しない(ラスボスではさすがに少しはその必要があるが……)ため理解さえ出来ればすんなり進める。例えば2面の船は一見すると2面とは思えぬ弾の数でアワアワしてしまうが、基本動作の式神を重ねることですんなり倒すことができる。3面のおかよさん地帯も次から次へと出てくるおかよさんめがけて式神を放り、弾が消えたことを確認してパパッと抜ける、ということが掴めれば難しいわけではない。厳しい場所はボムればいいという調整でもあり3面終盤やネコ蜘蛛第2形態第3形態なんかはボム前提の攻撃ともいえる。が、ここで死んでも4面で体力回復アイテムが出るので神経を張りつめる必要がない。4ボスの獣社や5ボス前座の足利凄氏は式神を使うと逆に危険をシステムの裏をかいてくるが逆に言えば式神使うと危険という知識があれば突破は難しくはない。といった具合にどれだけぐわんげについての知識があるかが重要であり逆に言えばそこまでゲームスキルを要求してこないため誰でもクリアまでたどり着きやすい作りなのである。システムの兼ね合いの名場面と言えばやはり6面後半の鬼ごっこ地帯であろう。実質全方向へ攻撃可能といったことを逆手に取った全方向から押し寄せる鬼の大群をショットと式神の使い分けで対処し、さらには逃げ回るシーンはぐわんげの中でも非常に印象的な場面である。

��唯一無二の世界、和風ホラーと怖さへの挑戦~
ぐわんげは純和風STGという非常に特異な世界観で構成されている。そしてそれは今見てもなお色あせることなく見るものを「ハッ!」とさせるものでもある。それは和風という物珍しい世界設定だからということもあるけれど、それ以上に細かく書き込まれたグラフィックにもある。屋敷であったり夜の山寺であったり神社であったり、そして最後の舞台である獄門山であったり、その戦いの舞台となる背景の書き込み具合や地形の設計は非常に美しく、そしておどろおどろしい。そして要所要所の演出が極めてハマっているのである。
例えば敵キャラの動きのリアリティ。今作の敵は人間や妖怪など他では見られない敵が多く、そして生き生きとした動きを魅せてくれるものが多い。とてとてと歩いてきてはフン!と攻撃を仕掛ける村人、大砲を放つ大筒男、くるくると華麗な舞を踊りながら弾幕をまき散らす舞華など人間キャラは無論のこと、壺からグバッと出てきて弾をまき散らし、白骨化してもなお攻撃の手を緩めない壺姫、凄まじい弾幕をまき散らす首取り小僧、突如飛び出しにらみつけてくるお志乃など見ていて非常に面白く印象的で、不気味。雑魚でこれなのだからボスも非常に面白い。蜘蛛と猫を足して生まれたネコ蜘蛛や戦車と一つ目妖怪を足した獣社、壁を突き破って登場し大猿へと変身する足利凄氏、そしてもはやこのゲームの代名詞とも言えるぐわんげさま、彼らの動きのおぞましさや見た目のグロさ(特にぐわんげさま)は強烈なインパクトを誇る。おどろおどろしくもハッとさせる動きの細かさが見て取れるのである。特にぐわんげさまの見た目のすさまじさは必見。
「戦車出せ!戦車!」という名台詞も存在する通り、今作には純和風にも関わらず戦車が登場。そしてこの戦車の動きに関してもまた、素晴らしい。貴様を殺すとばかりに木造戦車が動き弾幕を放ってくることの、なんと美しいことか。発射ギミックの多彩さや世界観に合わせて戦車を引きずる敵も存在するところも見逃せない。非常に見ごたえがあるSTGと言えるだろう。
そしてエスプレイドでもその片鱗を見せていた「戦いの中に潜む残酷さ」を押し出したような描写もぐわんげの特徴であり大きな魅力と言えるところ。船を壊せば油が広がる、といった演出を仕込んだのはガンフロンティアであり、敵を破壊すれば爆散し破片が散らばりあげくには木々も燃えるという演出を魅せつけたのは雷電Ⅱだが、ぐわんげもまた「生きている敵を殺せば血が出る」という演出を仕込み、見るものを圧倒している。が、安易に血をドバドバと出してはただの悪趣味なものになりかねない。この辺のバランスをしっかりと取って、プレイヤーに訴えかけるものにしている辺り今作が如何に考えられて作られているかが分かる。5面の舞華を倒す際なんかは特にこの残酷さを意識することだろう(轢殺しないと倒したことにならない)。また、敵の破壊だけでなく絵で魅せる物語部分でもこれを十分に見ることが出来る。ネコ蜘蛛に食われる名も無き人間、野槌に食われた牛の死骸、尼魏主、ぐわんげさま前の首が切断され胴体だけとなった死体の数々など、要所要所でえぐい残酷さが感じ取れる。主張しすぎることは無く、しかしプレイすることでこうしてちゃんと強烈な印象を残す。これぞ上手い演出といったものだろう。ただ一つだけ惜しい点があるとするならば、ゲームの仕様上式神の爆風によりこの素晴らしい映像の数々を認識し辛い、ということだろうか。しかし式神の派手な爆風があったからこそ、グロ過ぎず平常心を保ってプレイ出来るのかもしれないのだが……
こういったようにぐわんげは演出面に力を入れた作品であるが、中でも和風ホラーを強く意識した作品でもある。これはかなり度胸やセンスのいることでもあるだろう。STGで怖さの表現を組み込むのは中々に厳しいものがある。理由は単純で何度も再プレイすることによって敵配置を覚えることが重要なジャンルなので、怖い表現も何度も見てしまうので見慣れてしまうからだ。種が分からない状態でお化け屋敷に入るのと何が起こるか全て分かった状態でお化け屋敷に入るのとでは怖さが違うだろう、ということだ。
そこでぐわんげが取った方法は肝を冷やす印象的な演出や映像を仕込むということである。先に述べたネコ蜘蛛に食われる人間や尼魏主前の生贄辺りは、単なる怖さにとどまらない強烈なインパクトとえぐい残酷さを両立させている。その映像は一度見たら忘れられないものであり、そして何度見てもヒヤリとさせられたり食われて死んでいく名も無き人間に思いを馳せたりもしてしまうだろう。野槌の登場は最初見た時はビックリ系の恐怖を覚えるが、次第に見慣れてくると野槌に食われてグロイ死に方を遂げている牛にも目が行くだろう。こういった作り込みの細かさと、その発見による肝がひやりとさせられる点がぐわんげの怖さの表現で優れてるところなのだ。
またこの怖さの表現が最も現れたのが肝試しステージこと3面。夜の寺というロケーションといい、1面2面で妖怪の登場数を絞った調整がここにきて非常に効いている。壺姫の発狂時の髑髏顔なんかも非常に印象深い。そしてここで最も肝を冷やすのがお志野の存在。というのも、こいつ登場するときとしないときがあるのだ。そのためここだけはプレイする際非常に緊張感が漂うものになる。今回は出るのか?それとも出ないのか?と。前方に注意を向けていたら突如としてうにょーっと凄まじい顔をして飛び出てきて来ることの恐怖は慣れてもなお相当のモノだろう。
また、ゲーム開始時とエンディング時のデモシーンもぐわんげを構成する上では非常に重要であろう。モノクロではあるのだが極めてカッコよくそして美しく書き込まれた絵とそれらを生み合わせたカットは非常に見ごたえがあり、プレイヤーを一瞬でぐわんげの世界へと引き込む力を持っている。シシン編の血飛沫の飛ぶ描写やシシンの登場シーン、小雨編の藤村静彦へ向けて放った矢を舞華がかばうシーン、源助編の源助の企んでいる顔がバッと表示されすぐさま麒麟丸が雇い主に向かってガバッと襲うシーンなど短い間でも印象に残る場面は極めて多い。エンディングに関してもそれは同様であり、是非ともその目で見ていただきたいものである。
音楽はエスプレイドに続いて楠雅弘氏が担当。和を前面に押し出しつつもテクノ的というこちらも挑戦的かつ唯一無二の音楽のクオリティは極めて高く、特に3面の曲やボス曲が印象的。特に3面の曲はぐわんげを象徴する曲と言っても過言ではなく、サントラではボーカルバージョンまでも収録されるほどである。エンディングのいろは歌なんかも印象深く、耳に残るだろう。
ぐわんげはゲーム性を重要視する節のあるケイブSTGの中でも非常に演出面や世界観に力を入れて作られた作品である。それが故にケイブの中でも異端な作品にはなっているものの、その完成度は非常に高くやりごたえのあるものである。非常に親切な作りになっているので、自分の力でその世界を見ていただきたいものである。

��3つのモードを選ぶがよい!~
ぐわんげは特殊な内容かつ古い作品であるのでゲーセンなどに行っても今では中々置いていないかもしれない(そもそもSTGを置いてるゲーセン自体が……)。しかしXbox360に移植されており、しかもXboxOne互換にも対応している。今からやるのであればこちらがベストである。360版ぐわんげにはそれぞれ3つのモードを収録している。
・アーケードモード
所謂普通のぐわんげ。ぐわんげと言えばもっぱらこれであり、全ての基本ともいえるモード。名の通りアーケードの移植である。移植度は筆者はAC版ぐわんげに遭遇したことがないので不明だが十分に高いはず。
・青モード
AC版に微調整を加えた青版を移植したモード。基本はACと同じだが全体的に稼ぎやすくなっている他、4ボスが強化されていたり5ボス前座の足利凄氏や尼魏主第1形態が魔強化されていたり逆に尼魏主最終形態が大幅に弱体化していたりと元を知っていればかなりの変化がある。難易度の頂がACとは異なるので人によっては難しく感じるかもしれないが、総合的にはACと同等の難しさでありアーケードがクリアできるのならこちらもクリアできるはずである。
・360モード
ぐわんげの集大成ともいえるモード。最大の特徴は右スティックで式神を自在に動かせるようになったこと。これにより操作が難しいという敷居の高さが消滅し、さらにこれを踏まえた敵配置に変更されているので爽快感が増し、その上青版よりもさらに稼ぎやすいと至れり尽くせりなモードになっている。根本的な難易度も大幅に減少し誰でも楽しくプレイできてクリアしやすい作りになっている。

このうち360モードが出色の出来。ぐわんげの特徴をつかむのにうってつけであり、かつ難易度も高くないのでここから始めて、AC→青へと手を伸ばしていくと楽しいかもしれない。



0 件のコメント:

コメントを投稿