一応残虐性や暴力性が凄いレベルの作品でもあるのでそこは注意。どす黒い笑いではない分そこまで絶句するようなものは無いと思うけど。
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DATA_____
発売 / 開発 :Devolver Digital/Gabe Cuzzillo, Bennett Foddy, Matt Boch
登場時期 : 2019
ジャンル : 暴力/バイオレンスゴリラアクション
機種 : Nintendo Switch/Steam
~デジタルバイオレンスゴリラ参上!~
まずは公式の紹介文を引用させてもらおう。
このゲームについて感嘆符を一切使わず、ハッタリをかますような、そうでないような痺れるゲーム紹介文だ。さて、詳細内容に移る。今作は暴力ゲームだ。暴力を振るえ。以上。
『Ape Out』は、原初の記憶を呼び起こす脱出劇をカラフルに描くSmash-em-upゲームだ。野性を感じるリズミカルなバイオレンスと、激しいジャズミュージック。何者にも止められない勢いを生み出し、すべてを破壊するために捕獲者を武器や盾として使え。自動生成される自由への道を切り拓くのだ。
……そんなんじゃちっとも響きません!という人のためにもう少し書こう。ゲームは見降ろし型のアクションゲームで、見た目はホットラインマイアミなどに近い。プレイヤーはゴリラを操作してゴリラパンチをかましたり人間を掴んでぶん投げたりしつつ人間たちから脱走するのが目的だ。
人間たちは基本的にライフルだったり重火器だったりを装備していて、この荒れ狂う弾や火炎放射の嵐をワイルドに駆け抜けるゲームとなっている。
ライフルや重火器に対して生身のゴリラじゃ無謀じゃないのか、という意見もあるだろうが、暴力は無謀を伴うもの。従って今作は完璧なまでの暴力ゲームなのである。
勉学に励んだり友達と平穏に楽しく過ごしている君たちも、人生に虚無しか見出せない人も今日からはゴリラと化して人間を殺しながら戦場を駆け抜ける日々を送らざるを得ないぞ!
~決めろ怒りのメガトンパンチ!~
さっきから暴力暴力言ってるけど何がどう暴力なんだと言われたらそりゃもう破壊描写に他ならない。
人間に対して怒りのメガトンパンチを繰り出すことで、壁か人間がいればすぐさま肉塊に変えることが出来る。この破壊描写がおぞましく、それでいてあまりにも爽快。
パンチ一つ繰り出すことで光の速さで人間がすっ飛んでいき、壁に当たって辺りに血が飛び交い腕がもげて吹っ飛んでいく。この破壊の際に「ジャーン!」とか「ズバーン!」とシンバルを叩きつけるように鳴らした音が響き渡ることで破壊の快感をこれでもかと強めている。これが基本アクションの一つなのだからそりゃもう大盛り上がりも良いところ。ゴリラがパンチを繰り出しながら駆け抜ければ辺りは血と肉塊の海と化し、ジャズとして打楽器のがこれでもかと奏でられるのだ。
パンチに次ぐもう一つの基本アクションが掴み。人間に迫りガッと羽交い締めにすることにより肉の壁としての使用が可能になる。掴んだ人間はパニクって持っている武器を発射してしまう。これを利用することで「人間を掴む」→「掴んだ人間の銃弾で人間を一掃」といったコンボを決めることも可能。更に掴んだ人間をぶん投げることで粉砕することも可能だ。ゴリラの腕力肩力は凄まじくかなりの距離人間が吹っ飛んでいく。頭がどうかしそうになるほど愉快極まりない。
今作が何より素晴らしいのは単純明快な内容とそのビジュアル・サウンド面による演出だろう。怒りのメガトンパンチと掴みからの投げしか使わない操作を駆使して襲い掛かる人間を粉砕しつつ脱出すれば良い。脱出に関してもとにかく右の方に行けば何とかなるという分かりやすさ。そしてそれらのアクションを高める暴力表現の素晴らしさ。動かしているだけでも楽しいゲームが完璧に出来ており、その抜群の爽快感は数あるゴリラゲーの中でも屈指のものだ。
それを後押しするのがハイセンスなビジュアル面。見降ろし視点でキャラはシルエットのみというものだが、これが独特の味わいを出している。
きっちりと細部まで書き込まれていない分同じく暴力ゲームであったホットラインマイアミに対して幾分かの後ろめたいどす黒い笑いは減少しており、逆にセンスある魅せる映像へと昇華されている。おぞましいほどの残虐性に特化したホットラインマイアミと比べると、駆け抜ける爽快感を意識したものだろう。ステージごとに変わるカラーリングや停電による懐中電灯の明かり(これが独特の雰囲気あって素晴らしい)を目印にしたステージの存在なども魅力的だ。
各ステージ開幕のステージタイトル演出やゴリラ死亡時のDEADの文字と共にこれまで通ってきたルートが表示される演出もとにかくカッコよく、これがまさに何者にも止められない勢いを生み出しているのだ。ビジュアルに続いてサウンド面もハイセンス。
人間を一度ぶち殺すと本格的に音楽が流れ出す演出となっており、これがゲームの始まりとゴリラによるセッションの始まりを意識させるものになっている。音楽はメロディーを意識したものでは無く、ゴリラパンチ時の音を際立たさせるために静かながら激しいドラムなどが中心の音楽になっている。この静かながら激しい楽曲が、ゴリラの脱走の緊迫感を更に強めてゲームをこれでもかと盛り上げるのだ。
~目指せインテリゴリラ!~
以上のように爽快感に溢れる作品だが、ゴリラでウホウホ言いながらパンチしてればクリア出来る作品なのかというと、実はそうでもない。今作は割と難しいゲームであり、またステージの構造が毎回変わるというシステムによりパターンを覚えてどうのこうのというよりはその場その場の戦略性が問われるものになっている。従って知的なゴリラになることが求められるのだ。
今作の調整として、ゴリラを発見した人間はちょっとビビって躊躇しているというのがある。そりゃそうだ、いきなりゴリラが現れたら誰だってビビる。しかしこの人間がビビってるということが今作の駆け引きの肝になっている。
ビビってるわずかな時間で接近してパンチ決めて沈めることも出来れば掴みにかかることも出来る。もしこれが機械的にゴリラを見つけ次第銃を発射してくるような調整であったらただのクソ難しいだけのゲームで終わっていたはずだ。
この人間に見つかってからも少しの余裕があるということは非常に大きい。とりあえず目の前の敵をパンチで粉砕しても良いが、これがそれなりに固まって人が来ている場合は次々パンチしている間に銃で撃たれてしまうかもしれない。そうなったら掴んでぶつけたりとした方が有利だ。
また大勢に追われている場合一体一体のんびりと処理している暇はない。そうなった場合は銃弾をかわして駆け抜けることも戦略に成り得る。部屋に入ってやり過ごすのも良い。パンチと掴み投げがゴリラが取れるアクションだが、その戦略性はかなり高い。極限状態の戦場で何が最適解かを瞬時に考え、圧倒的なパワーで敵をぶっ倒す……。それがほぼ常時に渡って繰り広げられるのだからこれが面白くないわけがない。
一方でゴリラは当然ゴリラなのでパワフルでめちゃ強いんだが人間側も強い。銃やライフルなどはもとより先へ進むほどに破壊力を増した兵器を投入してくる。火炎放射器でゴリラを炎上させて来たり、仕舞にはグレネードランチャーを引っ張り出してくる。グレネードランチャーは極めてヤバく、銃弾喰らっても3発までは余裕で耐えられるゴリラでも爆散してしまう。
メガトンパンチで有無を言わさぬ即破壊でもいいのだが後半面はとにかく敵が多い&攻撃が激しい。ここでは遮蔽物を上手く使うことが求められてくる。ステルスゴリラとなって物陰に隠れてウホっと抹殺。血がブシュー。戦い方が分かれば分かるほど今作の戦闘の駆け引きにハマっていくだろう。
そして地獄のような戦場を潜り抜けた先に待つエンディング……これが本当に素晴らしい。幾度となく檻に囚われ人間に撃たれて命を落としたゴリラが、耐えに耐え破壊と暴力の果てに手に入れたもの……。是非ともそれを自らの手で体感してもらいたい。
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