2018年11月15日木曜日

今月の一本 スカイスキッパー

もはや遅れに遅れてたやつなので今月でも何でもないんですが、とりあえずのアレです。
任天堂作品の中でも割と不思議なタイトルなので興味があったら触れるだけでも。
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DATA
発売 / 開発 :任天堂/任天堂
登場時期 : 1981/2018(NS)
ジャンル : ドットイート+STG
機種 : AC/NS
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 ~幻の作品~
アーケードアーカイブス(以下アケアカ)、それは過去の名作から珍作、埋もれた作品までを忠実に再現し現行ハードに移植する夢のプロジェクトである。
ゲーセンで数回やっただけのあのゲームや、丸で知らないあのゲームまで、時には気軽に時にはマジにプレイ出来る。アケアカは筆者のようなレトロゲーマーの理想郷なのである。
Nintendo Switchにもアケアカ参入という事を聞いた時は「そういうのもありなのか!」と思ったし「ならドンキーコングとか出来るわけか!」と感動すらした。そして実際にドンキーコングは発表され発売された。
しかし、同時期に発表され発売されたタイトルがあった。あの幻となった「スカイスキッパー」であるッ!!!

……といっても正直こんなの知らねーが本音だった。23歳の筆者には当時生まれてすらいないし実際知らんし。しかしそこは現代、ちょちょっと調べれば何かしら情報は出てくるだろうとOKグーグル。だが大した情報は出て来なかった。えっ……、薄っぺらい「幻」では無く真の意味で「幻」の作品だったの?
しかし調べていく中で今作がSTGであることは分かった。普段STGをそこまで出さない任天堂が、最初期に送り出したSTG、そして幻となったゲーム……。これらの要素が重なりいつしか幻を追い求めるようになり発売日に幻をダウンロードするに至ったのだった。
……そしてプレイして見事にハマり、高田馬場に稼働していた実機をやりに行ったりするほどのスキッパーになってしまったのだった。

~複葉機でGo!~
今作は分類的にはアクションSTGなのだがその形式は独特。むしろSTG要素を含んだドットイートゲームが近いかもしれない。
プレイヤーは複葉機を操作し、徘徊しこちらに攻撃を仕掛けてくるゴリラを撃ち、ステージに散らばっている囚われたトランプ軍団(キング、クイーン、ジョーカー、ハート、クラブ、スペード、ダイヤ)を回収していくのが流れだ。ミス条件は地形に衝突することで、ゴリラの攻撃に当たったり障害物である雲に当たっても即ミスにはならない(デメリットはある)のはちょっと面白いかもしれない。

いきなりだが今作の第一印象は悪い!古いゲームだから、というのもあるとは思うのだがそれ以上に何をしていいかが見えてこないのだ。
この世界は何なの?こいつら誰?何この操作性?どうなるとミスなの?こんな狭所を潜り抜けないと行けないの?あのワープするゴリラはなんで? ??…!…!??……?? 襲い掛かる疑問符の数々。何をすべきかを明快に示すゲームを手掛ける任天堂の作品とは思えないほどの突き放しっぷりだ。
しかし分かりにくい、ということで今作を止めてしまうのは早計。この世界で試行錯誤していくうちにスカイスキッパーの魅力が分かってくる。自分を信じて1時間ほどこのゲームと向き合ってもらいたい。

まずは複葉機の操作性。妙なリアルさが存在しその場にとどまることが出来ず自然に前方へ移動し続けるという難儀なもので始めは地形に激突したり行きすぎたりして「難しいー!」と思うが慣れてくると、これを乗りこなすのが楽しくなってくる。極僅かな隙間を超速で駆け抜け囚われのトランプマンを連続救出!ゴリラの猛攻を急旋回&高速飛行で超回避!自分が激戦下のエースパイロットになったような気分にさせてくれるのだ。これが楽しいのなんの。
次に狙い撃ちの技術。ショットは前方に発射されるのではなく放物線起動を描いて下に落下するというものなのだが、これが逆に狙い撃ちをアツくする。上空からゴリラを怯ませて一気に下に下降、そのままトランプマン救出が今作の基本の流れだがこれが独自の面白さだ。そして突き詰めていく場合にはゴリラ正面にギリギリまで接近してショットを放つというテクニックも重要になっていく。速度を間違えばゴリラに激突で1機消滅という凄まじいリスクだがゴリラを怯ませれば得られるリターンは果てしないものだ。この駆け引きによる面白さが楽しいのだ。
更にスコア稼ぎを考えていくとその戦略性は恐ろしいほど深いものになっている。先のトランプ軍団を普通に適当に回収するだけでは低スコアだが、例えばスペードのみを集め続けると得点が飛躍的に倍増する。そこから同色のクラブで繋げると更にポイント倍増。出来れば同じ種同じ色で繋げていきたいところだ。しかしそうなると一部の回収できるトランプマンを見逃す必要も出てくる。ここが難しくも面白いところだ。
そしてこの構築するルートはプレイヤーの自由。どのルートでどのトランプマンから助けていき繋げていくかの戦略性は、最初期のゲームとは思えないほどアツい。例えば1面はスペード→クラブ→ダイヤ→ハートと繋げやすいが2面以降は本当に自由だ。自分は2面はスペード→クラブ→ハート→ダイヤと繋げているがこの場合はステージをせわしなく往復し狭い通路を潜り抜け違う種類のトランプマンはあえて見逃すなど非常に忙しいゲームへと変貌を遂げる。いささかマニアックすぎるきらいもあるが、だからこそ今やっても新鮮な気分で遊べる作品に仕上がっているのだ。
そして時間制限制。複葉機には燃料の概念が存在している。これが尽きると燃料切れで下に徐々に落ちてしまう。下は地形なので燃料切れはミス確定だ。これを避けるべくどのルートを通るかの戦略性が問われる作りになっている。また各ステージ1度のみ燃料補給の機会が存在している(スタート地点の旗を取ると補給出来る)。これを上手く使うことも重要…だが、この旗を取らずにステージをクリアするとボーナス得点が手に入る。スコアを取るか、安全を取るか、実に悩ましい選択肢だ。無論トランプマンのマークや色を繋げたりすることを考えると必然的に燃料も枯渇してしまう。この辺の駆け引きも難しくも楽しい。
ステージの作り込みやグラフィックも外せない。グラフィックは81年のゲームだけあって流石にきつい…と思いきやゴリラの書き込みなどは恐ろしいほどにされている。更にゴリラの可愛らしいやられモーションや攻撃モーションである腕振り回しの滑らかさの作り込みやゴリラには2種類いるなど任天堂のゴリラへの思い入れが窺える。ゴリラはまさに今作のキーマンだ。またトランプ軍団の絵の作り込みもかなり細かいのも特徴的で見ていて楽しい。
ステージも複雑怪奇な構造をしていて、これを攻略していく面白さも中々。1面ではトランプマン連続救出の面白さを、2面では誰をどこから助けるのかの駆け引きの面白さを、3面では狭所潜り抜けの面白さを、4面では迷路を攻略する面白さを、といった具合に1~4面でステップアップ出来るような難易度調整とどこを楽しんでもらいたいかを示した構造になっているのだ。4面の迷路は今作屈指の難所であり、ここが突破出来れば一人前のスキッパーだろう。
一方でやはりここまでマニアックな作りであることが難点といえば難点なのであろう。万人向けのゲームとは言い難く、自分で試行錯誤して遊べる人以外にはどうにも勧めにくい。またマニア向けの作品でスコアシステムにこだわりを感じられるが、2周目のステージ4がループするという仕様なので、2-4をノーミスでクリアする方法を確立してしまえば半永久的にスコアが稼げてしまうという問題もある(もしかしたらドンキーコングのように限界はあるのかもしれないが……)。スコア稼ぎが面白いだけにこの点は本当に痛い(2-4ループを確立するのはそれなりに難しいのでバランスは取れているのだが……)。ゴリラの作り込みなど見た目の華やかさこそあれど、幻となってしまったことも納得のゲームでもある……
しかしこのスコアの問題を解決するシステムがNintendo Switch版では搭載されていた。それこそがキャラバンモードである。アーケードアーカイブスではおなじみの仕様と言える、開始5分間の得点を競うモードだ。これによってスカイスキッパーはスコアに問題を抱えた惜しい古いゲームでは無く、現代に蘇ったもはや新作となったのだ。前述したように今作はスコア稼ぎがアツい。誰をどの順番で回収していくかの戦略性と5分という厳しい時間制限がこのゲームの中毒性を更に高めたのだ。1面をどれだけ短縮できるか?2面はどうすればタイムが短縮できるのか?3面全繋ぎするとタイムが足りないけど、ならばあえて最速でクリアしてフラッグボーナスを取得して4面で出来る限り何とかして……いや、もしかして1面2面3面全部繋ぎ無視すれば2-1まではギリギリ行けるんじゃない?……こうした机上の空論を組み立てるのが面白いのだ。そしてこの頭の中までゲームする感覚、これこそは良いゲームが持つ要素に他ならない。無論机上の空論は本編でも有効…というか、プレイをすればするほど「あっ今度あーしてみようー」と思い浮かぶ。この観点で見てもスカイスキッパーは良いゲームなのだ。

スカイスキッパーは色々と謎が多い。このトランプ軍団は何者なのか。ゴリラの謎のこだわりは何なのか。ステージクリア時に流れる曲って、あの作品のあの曲じゃん!とか。マニアックでありながら粗は残っている内容とか。この絶妙な謎の残りっぷりが今作を幻の存在へとしてしまったのかもしれない。
しかし今見ても独自性のあるルールやその駆け引きの面白さは色あせていない。スコアアタックに熱中するほどの作り込みの妙が確かにある。2-4ループを確立させてスコアの限界に挑むのも良し。キャラバンモードで序盤の稼ぎを突き詰めるのも良し。通常モードでまったりと遊ぶのも良し。少なくとも筆者を高田馬場のゲーセンで稼働していた本物へのプレイに足を運ばせるだけのものを持った作品であったことは事実だ。
興味が湧いたらぜひ一度この幻に触れてみてほしい。そこにあるのは懐かしくも新しい独特の体験のはずなのだから。このゲームを知られざるゲームに止めておくのはあまりに惜しい。

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