_____
DATA
発売 / 開発 : コナミ/コナミ
登場時期 : 1989
ジャンル : ステージクリア型アクション
機種 : FC
_____
~血の歴史~
既視感。血と死体と腐臭漂う地獄としか形容できない光景は、初めて見るにも関わらずどこかで見たことがある光景だった。
悪夢のような空間、悪魔の城の内部。飛び交う生首、死者がうごめく回廊。階段を上った先の、初めてでありながら、しかし間違いなく幾度となく見た月の光……
それは戦いの歴史に他ならなった。想像を絶する能力を持った二人の者の激戦の記憶に他ならなかった。
一方は吸血鬼として恐れ入られるドラキュラ。もう一方は唯一ドラキュラを倒し封じ込めることの出来る、それ故に恐れ入られ影のように生きてきたベルモンド一族。
一方が目覚めればもう一方も目覚める。血が互いを引き寄せる。そしてその血故に彼らは永遠に戦い続けるだろう。
その既視感は決して気のせいではない。血の中に確かに存在する、死闘の記憶そのものなのだから。
そして今、再び悪魔城の扉は開かれる…
~「悪魔城ドラキュラ」の確立~
悪魔城ドラキュラシリーズ3作目、悪魔城伝説はシリーズの中でも一際高い評価を受ける傑作アクションゲームである。ゴシックホラーの世界観に硬い立ち回りのアクションで衝撃を与えた悪魔城ドラキュラ、変化を求めたドラキュラⅡ呪いの封印という流れを受けての、(ドラキュラⅢ)悪魔城伝説は初代をベースに数々の新システムが搭載された作品だ。
世界観的には初代よりも前の作品となっている。惜しみなくつぎ込まれた当時のコナミの最高峰の技術の数々、拡張チップ「VRCⅥ」によるFCの限界を超えたグラフィック、音楽は今見ても衝撃的なレベルであり、そこにステージ分岐や仲間の存在が加わり伝説の名にふさわしいゲーム内容と言えるだろう。
悪魔城ドラキュラといえば泣く子も黙るゴリゴリのアクションゲームだ。初代の時点でその「硬い」質感のアクションは完成していた。
制限の強いジャンプ、ボタンを押してからワンテンポ挟んだうえで攻撃判定が出る武器、階段の昇り降り…。これらのリアルな質感を重視したアクションは同年代のアクションゲームと比べてみても異彩を放っていた。
そして何より異質だったのは主人公の弱さだった。階段から滑り落ちれば転落して即死、メデューサヘッドに激突して奈落の底へ、ジャンプの位置感覚を把握できておらず闇の中へ、襲い掛かる敵の数々を処理しきれなくて圧死……。地獄のようなステージを切り抜けてもライフがなくてボスに敗死……。アクションゲームとしてはあまり見られない調整と言って良いかもしれない。
しかし、悪魔への特攻武器でありベルモンド一族の代名詞である最終兵器ヴァンパイアキラー、もとい鞭の使い方を覚えていくとこの独特の硬いアクションが面白くなってくる。鞭の攻撃範囲を把握して振っていくことである程度の安全を確保しつつ進める調整になっていることに気が付くだろう。絶妙な攻撃範囲とワンテンポ遅れてから攻撃判定が出現する仕様から一撃一撃間合いを取ってじっくりと進めていくのがカギとなり、そしてこの間合いの把握や読みがこの上なく面白い。主人公が死にやすいことも相まって慎重な立ち回りが求められることが多く、これが間合いを取って鞭を当て先へと進んでいく快感を強めているのだ。
悪魔城伝説はそのアクションを更に磨きをかけたものに仕上がっている。ゲームとしてのプレイングとしての硬い質感のアクションと、操作的な一面からの軽快さは動かすことの快感を強めた作りだ。ジャンプの制限が強く独特なものにも関わらず思わずピョンピョン飛びながら移動してしまう楽しさがそこにあるといっても良い。
またサブウェポンのバランスも非常に良好なものになっている。この使い分けやボスにどのサブウェポンを持って行くかの戦略もまた面白いものだ。そして性能が違う仲間キャラ3人が更に攻略や動かすことの楽しさ、使い分けの戦略を考えるアクセントになっている。特にジャンプ制御が効き壁張り付きが可能なグラントは非常に心強い仲間としてプレイヤーを助けてくれるだろう。
~既視感による重厚な悪魔城の世界~
悪魔城伝説で印象的なのは既視感だろう。どこかで見たことがある、というのは否定的にも見られることがあるが一方でシリーズもののお約束やファンサービスなど好意的に見られることも忘れてはならない。そして悪魔城伝説はこの既視感の演出が恐ろしいほどに上手い作りになっているのだ。
地獄よりも地獄的なステージの数々を潜り抜けようやく辿り着いたステージ8悪魔城本館は、初代悪魔城ドラキュラのステージ1である悪魔城本館に酷似した構造であり更に流れる音楽は初代のステージ1の名曲「Vampire Killer」なのだ。初代悪魔城ドラキュラをプレイした人は「あっ!」と驚くことになるだろう。初代で見た光景が、演出を強化してそこに展開されているのだから。
面白いのは今作の世界設定が初代悪魔城ドラキュラよりも以前の話であることだ。そしてこのステージで使用される、Vampire Killerのアレンジ曲の曲名は「Dejavu」、つまりは既視感なのだ。初代悪魔城ドラキュラよりも昔の設定の話にも関わらず既視感を覚えることを主人公は、そしてプレイヤーは感じているのだ。これはかなり奇妙なことに思えるかもしれない。しかし、悪魔城シリーズの根底にあるドラキュラとベルモンド一族との戦いという背景を考えればこの点も素直に納得がいくだろう。既視感の存在により、ドラキュラとベルモンド一族との死闘が続いていた、そしてこれからも続くことを示唆しているのだ。
悪魔城伝説には既視感を覚える場面が多い。初代に登場したボスがパターンを変えて登場したり、シチュエーションが似ている場面が存在している(その代表例こそがステージ8だろう)。この既視感の存在は悪魔城伝説はもとより悪魔城ドラキュラシリーズという作品を恐ろしいほどに深いものにしているのだ。今作最終盤にはドラキュラとの決戦が待っているが、そこに至るまでの階段を昇った先の、悪魔城から見える月の輝きの美しさとその場面での既視感は、今作屈指の名場面と言っても過言ではないだろう。
~怒涛の演出に目を見張れ~
悪魔城伝説は当時最高峰の技術がこれでもかとつぎ込まれた作品である。今作の発売は1989年。FCソフトが円熟し完成に近づいて来た中で発売されたソフトだが、90年代のFC末期に出たソフトに匹敵するほどの技術や表現技法が組み込まれている。ドラキュラスタッフの魂や意地、誇りが今作には詰まっているのだ。
まずはグラフィック面。ゴシックホラーの世界観を際立たせるような書き込みがなされおどろおどろしい雰囲気は完璧と言って良い。またステージの多彩さも見逃せないところだ。悪魔城は勿論のこと、今作では悪魔城までの道のりもステージになっている。教会から墓地までのステージ1や死の森ステージ3から、水没都市に幽霊船、地下道など多彩な場面での戦いが繰り広げられる。そしてそれを感じさせる背景の書き込みがこれまた素晴らしい。
またかなりギミック性が強まりそれ故にアクション性が高まっているのも欠かせないポイントだ。強制スクロールステージに始まり崩れる床などがプレイヤーをいつも新鮮に驚かせる。水没都市での浸水から逃れるギミックなどは強烈な印象を残すだろう。
中でも悪魔城伝説ならではの、これぞ悪魔城伝説とも言うべきステージが2面の時計台だ。回転機能を持たないFCで、あたかも回転しているように背景の歯車が回転している様は強烈な印象を残すだろう。更に振り子を使ったギミックや回転する歯車を飛び乗っていく場面など演出と噛み合ったアクションの数々が楽しめるステージになっているのだ。FCの限界を超えてプレイヤーを驚かせる、楽しませるコナミの意地と心意気がこの時計台には詰まっていると言って良い。
限界を超えるといえば、音楽の話は避けては通れない。音絡みに関しては他のメーカーよりも並々ならぬこだわりを持つコナミは、拡張音源をも開発して一味違う音色を作り上げてきた。MSXのSCC音源(代表作:グラディウス2)に衝撃を受けた人も多いだろう。
そして悪魔城伝説にはVRCⅥと呼ばれる拡張チップが搭載された。これにより先に述べたグラフィック面が大幅にパワーアップしたのもそうだが、何より音楽が凄かった…! FCの同時発音数の限界を超えたその深みのある音色はあまりにも重厚。教会で祈りを捧げる主人公からの、悪魔城伝説を代表する名曲「Beginning」は誰が聴いても痺れるほどのカッコよさを誇っている。おどろおどろしい曲の表現からコナミらしいノリとテンポの良い曲まで様々あり、悪魔城伝説の世界を印象深いものにしている。楽曲全てが名曲と言って良いほどだ。
筆者は先の「Beginning」は勿論のこと、「Clockwork」「Mad Forest」「Dead Beat」「Aquarius」「Dejavu」「Riddle」「Overture」「BOSS3(ドラキュラ最終形態)」辺りがたまらなく好きだ。特に「BOSS3」はそのシチュエーションと展開も相まってまさにドラキュラとの最終決戦に相応しい楽曲になっている。今作にはサウンドテストが搭載されているので名曲の数々に浸るのもまた一興だ。
~ハードアクションの先にあるもの~
初代悪魔城ドラキュラは驚異的な完成度のゲームであったが一方でその難易度もかなりのものであった。その難しさには独特の硬いアクションの難しさがあるのは勿論のこと調整が非常に絶妙な難しさを持っていたのもあった。死んでは戻され、考え進んでいく。コンテニューが無限だからこそ成立したトライ&エラー型ゲームの極地でもあるが、中々にハードルは高かった。
悪魔城伝説はルート分岐システムを採用したことにより簡単なルートを選べば難易度を適度に保ったまま進める調整になっている…と言いたいところだが、悪魔城ドラキュラの流れを受け継いでいるからかやはりどのルートでもかなりの難易度になってしまっている。そして難関ルートは鬼神のような難易度と化しているのも事実だ。
特にアルカードルートの7面の難易度は本作屈指のもので、筆者も長時間の足止めと絶望を喰らってしまった。ゲームセンターCXで我らが有野課長がその場面だけで7時間半をもかけた末に断念を決断するほど、といえばどれほどのものかお分かりいただけるだろう。パスワード制を採用しているのであまり関係ないといえば関係ないのだが、ボリュームが凄まじいこともハードアクションに拍車をかけている。10面近くステージがあって、そのどれもがかなり難しいというのも相当なレベルだろう(地味に序盤のステージも同時期の他のアクションに比べて難易度高め。時計台とか)。
悪魔城伝説の難しさには硬いアクション、思うようにいかない独特の操作感がまずある。次に敵配置の絶妙さ、嫌らしさが存在している。そして、パターンになり切らない要素が大きいということにある。敵配置を覚えて、そこに対する対処を組み立てて突破していく、つまりはパターンを組むというのはアクションゲームやSTGでの基本の一つだ。悪魔城伝説はまずパターンを組むまでが結構難しく、そしてパターンを遂行するのがかなり難しい。ここだけ押さえておけば後適当でOK~みたいな場面があまりなく、その場その場に対してきっちり動く必要があり、動いてるつもりでも敵のランダム性などであっさりやられることも。アクション慣れしていない人にとっての敷居は相当なレベルの作品かもしれない。
しかし、である。今作は理不尽な難易度のアクションゲームでは無い。悪魔城伝説で求められるのはパターンも大事だがそれ以上に慎重さや読み、戦略が重要になる。
主人公の動きの制限を読んでのギリギリジャンプや鞭の範囲を読んでの遠距離からの潰しは勿論のこと、上に居るスケルトンをサブウェポンを使うか、それとも鞭を当てるか、はたまた逃げるか…といった思考の部分がかなり効いてくる。そしてこの考えて動かす過程がたまらなく面白かった。どれだけ嫌らしい場所でも何らかの抜け道が残されてる。そして難所を幾度となく切り抜けていく度、いつしか主人公らと一体化しているような気にすらさせてくれるのだ。そしてどれだけ難しくても肉を隠してくれていたりサブウェポンを置いてくれていたり連射で即倒せるような調整にしてくれていたりするスタッフの配慮や絶妙な調整も忘れてはならない。諦めずに挑戦を繰り返してしまう楽しさが確かにそこにあるのだ。
自分は恥ずかしながらコナミアニバーサリーコレクションで初めてプレイしたのだが、その壮絶な内容に終始圧倒されっぱなしであった。
硬いアクションと絶妙としか言いようがない巧みなゲームバランス、そしてもう言わずもがなのグラフィックに音楽……。そして何より、初代悪魔城ドラキュラの既視感。その既視感の根底にあった、悪魔城ドラキュラという世界観の深さと製作スタッフの悪魔城ドラキュラへの思い……。全てが、圧倒的だった。
あのBeginningの衝撃を、時計台の歯車の回転を、水没都市の水没する様を、ブロック落下地帯を、悪魔城突入時の既視感を、死神を、ドッペルゲンガーを、悪魔城から見える月の光を、何度も変身を繰り返すドラキュラを、忘れることは無いだろう…いや、忘れることなど出来ないだろう。その既視感は血となってプレイヤー自身にも受け継がれているのだから。
最後になるが今作をプレイする際は初代悪魔城ドラキュラを先にプレイしてからの方が感動が何倍にも強まるだろう。コナミアニバーサリーコレクションであれば気軽に快感することが出来るのでお勧めだ。
0 件のコメント:
コメントを投稿