2016年12月11日日曜日

今月の一本 いかちゃん(3DS版)

今月私がオススメするゲームは海産ゲーマー御用達のこの作品でございます。短い作品だと中々どうして、語ることは難しいねー。ダラダラ語った方がいいのか、それともピシッと決めた方がいいのか。ピシッと決まった試しなんて今まで一度もないけど……
ちなみに海産ゲーマーとは、ダライアスやスプラトゥーンのような海産物のゲームをこよなく愛するゲーマーである。規模は不明。たぶん今頃はACE OF SEAFOODとかをバリバリ遊んでいると思われる。
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DATA
発売 / 開発 :pikii(3DS)、開発室Pixel(Win) / 開発室Pixel
登場時期 : 1999(Win)/ 2016(3DS)
ジャンル : 箱庭アクションアドベンチャー
機種 : 3DS/Win
今回は3DS版をプレイ



��1時間、わずか1時間、されど1時間~
あの「洞窟物語」を作りだした開発室Pixelが、洞窟物語以前に作り上げたのが今作「いかちゃん」である。初期の作品にして、極めてゲームらしいゲームであり数多の要素が破綻なくまとまった奇跡のような作品である。
今作は、はっきり言ってしまえばこじんまりとまとまっているゲームである。自分が初見でクリアまでに要した時間は、1時間。2016年、3DSから出たゲームとしてみれば圧倒的に短く、フリーゲームであることを考慮してもやはり短い感じは否めない。しかし、その1時間の中にプレイヤーをゲームから離れさせない要素をこれでもかと詰め込んだ、驚異的な作品である。僅か1時間で終わってしまうこのゲームが、一体何故ここまでプレイヤーを強烈に惹き付けるのか。その答えはプレイしたものだけが知っている……

��あなたは、神秘の海を漂う…~
今作のジャンルは箱庭タイプのフィールドを彷徨うアクションアドベンチャーゲーム。経験値でのレベルアップやゲームの特性からアドベンチャーRPGと言ってもいいかもしれない。記憶を失った主人公であるいかちゃんは海の底で目を覚まし、海の底を漂いまくりという感じだ。
今作の評価の高いところといえばやはりその空気感ということになるだろう。全て可愛らしく綺麗なドット絵で描かれた幻想的な海の底、可愛らしく生き生きとしたキャラクター達、優しくそしてどこか物寂しい物語とテキスト、それらをこれでもかというほど引き立たせる音楽…。全ての要素が高水準でまとまっていて他にはない魅力を出していて「いかちゃん」の世界を構成している。実際プレイ終盤で「まだ、このゲームを終わらせたくない。もう少しだけこの世界に居たい」と思ったほどだ。そう思わせてくれるほどのゲームは意外と少ない。
空気感が良いということは、逆に言えばそこだけが突出したゲームと見られてしまうかもしれないが、いかちゃんはゲームとしての核の部分も濃密だ。まずは操作性。ぷくぷくと可愛らしく泡を出して斜め上にぴょこんと移動というかなり独特な感覚ではあるが、これが中々「イカらしさ」を上手く表現できている。初めは慣れないものだが、次第にうまく操作できるようになると海を漂っているだけでもどこか楽しくなる。動かしているだけでも楽しいという、ゲームの肝をしっかりと押さえている。次にマップデザイン。1時間で終わる内容ということでフィールドはそこまで広くはないが、広大な世界に思わせてくれる構図が凄い。うねるように構成された海の底の海底洞窟は自分が広大な世界にいると錯覚させられるほどだ。NPCやギミックの配置や構図も上手く「あの先に何かあるんじゃないか?」「もっと漂いたい」などと強く思わせてくれる。アドベンチャーとしてのフラグ立ての妙と、アクションとしての敵配置や挙動のバランスも極めて良好。難しいな、と思ったら探索してレベル上げしてから先へという流れも自然に取り込んでいるのが上手い。本当に丁寧で優しいゲームだ。シナリオも秀逸。長いゲームには長いゲームなりの、短いゲームには短いゲームなりの物語が求められるものだが、「いかちゃん」のそれは極めて濃密。個性が溢れ出ているキャラと、崩壊の迫る世界をシンプルに、だが丁寧に描いている。ゲームの流れと上手くかみ合った展開も非常に素晴らしいところだ。

元々フリーの、しかも10年以上も昔の作品であるから、ちょっと物足りないなと思う所は確かにあるかもしれない。しかし、短時間で濃密なプレイ体験が出来るのは計り知れないほどメリットが大きい。そして、そのあまりにもステキな世界は手元に残しておきたいと思うほどのゲームである。それが携帯機で持ち運んでいつでもできるのだから、これほど嬉しいことも無い。これ以上何を望む必要があるだろうか?
「いかちゃん」は、失ってしまった何かを取り戻させてくれる、短い時間で極上のゲーム体験が出来るこの上ない傑作ゲームである。これをプレイして泣け!

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