2016年9月20日火曜日

今月の一本 Crypt of the NecroDancer

予想だに出来なかった3回目に突入した今月の一本。そしてまさかの2本目である。いやー本来はシルバニアでお茶を濁す予定だったんだけどあまりにもこのゲームが面白すぎてねえ……。こうした駄文を書き散らす次第になったわけである。ネクロダンサーが面白すぎるのが悪い。素晴らしいゲームだった。
しかし残念なのが自力ではクリア出来ない部分があったことか……。こんな状態で紹介文とか書いていいもんだろうか。まあもう書いちゃったんだから仕方ねえケド。
��____

DATA
発売 / 開発 :スパイク・チュンソフト(日本) / Brace Yourself Games
登場時期 : 2015(Win,OS X, Linux)/2016(PS4,PSVITA,iOS)
ジャンル : ローグライクリズムアクション
機種 : PS4/PSVITA/Win/OS X/Linux/iOS
今回はVITA版をプレイ



~ローグ&音ゲー その斬新な組み合わせ~
アイデア発想法の中には「既存のものを組み合わせる」なんてことは定番と言えば定番である。いやもうそりゃまったくもってその通り。しかし現実は往々にして無慈悲であり破綻なく組み立てられているものは少なく、アイデア先行型の悪魔合体、合体事故の如きゲームもよくあった。
初めてその存在を知った時は期待よりも不安が走った。「これは大丈夫なのか?」と。ローグライクゲームと言えば「トルネコ」「シレン」に該当される「不思議のダンジョン」系ゲームであり、詰将棋の如く確かな知識を要求されじっくり考える思考型のターン制RPG。かたや音ゲーはリズムを体にしみこませ「曲にノる」音楽的センスとそれを実行するための反射神経が要求されるゲームだ。ハッキリ言ってジャンルが違うどころか相反している。これを破綻なく組み立てるなんて出来るのだろうか。
……結論から言おう。クリプトオブネクロダンサーはその二つを見事なまでに組み合わせた作品だと。それどころかローグライクゲームに全く新しい風を吹き込んだ傑作だと。

~美しいシステム~
先述した通り今作はローグライクと音ゲーをリミックスしたものである。そのシステムについて触れて行こう。
基本的にはローグライクのお約束を踏襲したものになっている。ダンジョンの形状は毎回変わり落ちているアイテムも違う。その場その場で「どうするか?」といった判断が求められるのはローグのエッセンスが詰まってるだろう。では最大の違いはどこか。それはターンシステムである。このゲームでは楽曲のリズムがターンに対応しており、音ゲーにおけるマーカーに合わせて行動する必要がある。複雑怪奇なリズムは無く基本的には一定であり音ゲーの中では「リズム天国」のような感じである。敵もリズミカルにそのリズムに合わせて行動している。このリズムに合わせて行動しながらダンジョンを攻略するのが基本的な流れである。
この「リズム=ターン」のシステムによって今作は全く新しいゲームとなった。思考型のゲームであることは間違いないが、従来の時間をかけて考えられる場面はほとんど存在せずむしろ瞬時の判断力がものをいうバランスへと変貌したのだ。リズムに乗って行動し敵のリズムを見切り敵のダメージを喰らわずに倒すのが最重要となる。ローグライクにおいて先制攻撃や牽制は基本動作であるが、今作は見た目こそ異端ながらその本質をこれでもかというほど強く意識した作品である。それが強く現れているのが主人公の体力や敵の火力。歩いても体力が回復しないこと、敵の火力がかなり高めに設定されていることもさることながら、主人公のライフはかなり低めに設定されており一撃もらうだけで致命傷になりかねない。そのため敵の特性をしっかりと体系化し、楽曲のリズムも覚えていく必要がある。そして、そうして積み重ねた知識によってダンジョンを攻略していく。それはまさしくローグライクの神髄である。異端ながら王道を行く、そんな言葉が似合う。
ゲームとしての難易度はかなり高い部類に含まれると思われる。まずその全く新しい感触に慣れなくてはいけないこともそうだがそれ以上に気を抜いたり判断を誤ると即死しかねないバランスであり、プレイにはある程度の緊張感が漂う。しかしそれを逆手にとったか、今作のダンジョンは他のゲームに比べてもかなり短めであり集中力が持続する時間でスパッとクリアできる範囲に収まっているのが特徴とも言えるだろう。基本となる4つのダンジョンは通常フロア3つボスフロア1つで構成されていて、これだけ見ると「む? 意外とボリューム少な目?」なんて思ってしまうが、1プレイにおける密度の高さが他のゲームをはるかに凌いでいることを考えれば全く気にならない。ここには音ゲー的な集中力のバランスのとり方が現れているだろう。死んでもすぐに再プレイしたくなることと、その際のテンポの良さは他のゲームの追随を許さない。また難易度こそ高いものの数々の救済措置が設けられているので何度も挑むうちにいつしかクリア出来るようなバランスが美しいと言えるだろう。今作にはダンジョン内での店で使える金貨以外に拠点で使えるダイヤなるものが存在しており、これを拾い集めて使うことで数々のアンロック要素を解放することが出来る。例を挙げれば「主人公のライフを上げる」「新たな強力武器の解放」「ダンジョンに道具持ち込み」等がある。これらのアンロックを解放しながら進めるのが基本的な流れであり、そうするうちに自然にクリアできるバランスに仕上がっているのが面白いところだ。また「だったらダイヤ集めておけばいいんだろういっひっひぬるゲー万歳!」なんてことにはならず、ダイヤは貯めることが出来ない(ダンジョンに挑む際に所持ダイヤが消滅する)ため歯ごたえのあるバランスが保たれているのもポイント高い。またローグライクが土台なだけあって最後にものを言うのがリアルラックというのもまた良く出来ているなーと思う次第である。
また今作を語る上で外せないのがその音楽面。ローグライクリズムアクションという複雑なジャンルかつローグライクとしては聴き飽きないものが求められ、音ゲーとしてはリズミカルでノリの良く更に短く締めるという非常に難しい楽曲作りが要求されたと思われる。しかしこの難しい命題をいとも簡単に成し遂げ、更には捨て曲が一つもない(!)なんていう驚愕ものの楽曲群を作り上げてしまってるのであるから驚きだ。作曲を務めたのは「Super Meat Boy」「The Binding of Isaac」の音楽を作ったDanny Baranowsky氏。リズミカルでありさらにはゲームデザインレベルデザイン面と極めて噛み合ったそれを作り上げたのはもはや感服するばかりである。また編曲にA_Rival氏とFamilyJules7xも加わっておりこちらも負けず劣らずの良曲となっている。
つまりこういうことだ。クリプトオブネクロダンサーは相反する二つのジャンルをただ単に融合させただけでなく、ゲームデザイン面レベルデザイン面音楽面を高次にまとめあげた作品だったのだ。これまでと全く違ったアプローチでここまでローグライクゲームの魅力を引き出したゲームは存在しない。全てが美しくまとまった今作はローグライクゲームとして間違いなく一級品である。今までになかったプレイ感覚を提供する、ローグライクの魂がここにある。

~悪魔よりも悪魔的ダンジョン~
おっかなびっくりの難易度を誇るクリプトオブネクロダンサーのメインダンジョンとなる4つのゾーンをはみ出し的に紹介! ついでにゲームモードについてもここで触れておくことにする。

”ダンジョン”
・ゾーン1
チュートリアルからいきなり送り出されるダンジョンにしては難易度が高め。厄介な動きをする敵こそ少ないものの、ゲームに慣れなきゃ死を避けることなど出来ない。ちなみに筆者は青スライムの対処が分かったけど理解することが出来ず無意味な死を繰り返した……。エリア3で流れる楽曲は今作屈指の名曲だと思うのだが、どうか?
・ゾーン2
自分と逆方向に同じ動きをするクローンや、鈍足ながら超火力のゴーレム、動かないが周囲にダメージを与える毒キノコなど個性あふれる面々によって構成される。難易度は順当に上昇しており「ゾーン1クリア出来たんだからこれもう楽勝っしょ!」なんていうプレイヤーの心をへし折るくらいには油断ならないゾーン。
・ゾーン3
マグマとアイスの二つで構成されるゾーン。マグマとアイスでリズムは同じながら曲のアレンジが違うという演出に惑わされると危険。また氷の床でリズムを崩してそのまま崩壊するパターン多し(実話)。スライムの摩訶不思議な規則性に動揺して攻撃をボコボコ喰らうこともしばしば(実話)。
・ゾーン4
カベをぶっ壊して進む迷宮的ダンジョン。難易度は言うまでもなく過去最高。決まった倒し方じゃないと倒せない剣士やカベに潜むクモ、死に際に爆弾を置くゴブリンや魔術を使って混乱させてくるリッチ、ダメージを与えると床にトラップを仕掛けるゴーレムやプレイヤーをワープさせてくるサルなど厄介な敵だらけで気分はまさに鰹節の死のダンスの如く踊り死にしかねない(何言ってるんだ

”ゲームモード”
・ノーマルモード
ゾーン1~ゾーン4のうちどれかを任意に選択して攻略するこのゲームの基本となるモード。
・デイリーチャレンジ
一日1回挑戦できるモード。
・オールゾーンモード
一度も死なずにゾーン1~ゾーン4をクリアし、スコアを競い合うモード。開始時のライフは3で固定され全てのアンロック要素が解放されている。
・オールゾーンモード(シード)
基本上と変わらないが開始前にシードを指定できる。そのため同じ構造のダンジョンに挑むことが可能。
・キャラクターセレクト
キャラクターを変更できる。ここから更に3つのモードを選択できる。
・ストーリーモード
このゲームの物語を追うモード。ケイデンス、メロディ、アリアの順にプレイをする。
・オールキャラモード
コーダ(後述)を除く9キャラで順番にプレイするモード。プレイ順番は任意。
・デスレスモード
死ぬまで周回プレイを続ける狂人向けのモード。
・マルチプレイ
アドホック通信を利用して協力プレイが可能。


~迷宮に挑む者たち~
個性豊かな操作キャラクターを軽く紹介しておこう。操作キャラが変われば難易度もプレイ感覚も変わるので「難易度が物足りないぜ!」なんていうハードコアゲーマーの諸君や「難しすぎて俺には無理…」なんていう俺みたいな人たちもキャラを変えれば見える世界が変わってくるぞ!

・ケイデンス
デフォルトのキャラクター。ストーリーが存在する。個性は無いもののそれゆえ何かに縛られたりせずに攻略することが可能。
・バード
リズムを無視して攻略することが可能。敵はプレイヤーが行動した後に行動する、言わば普通のローグライク風味のゲーム体験を味わえる。間接的に難易度が低くなるのでこのキャラでロケハンしておくのが初心者にはオススメ。最初から居てハゲているのが最も目立つ特徴だったりする悲しき中年。
・イーライ
爆弾を無限に使え設置した爆弾を蹴り飛ばすことの出来るボンバーマンみたいな男。攻撃武器を持ち込むと自害する。
・ドーヴ
敵にダメージを与えられない平和主義者。最初から階段が解放されており小ボスを倒す必要がない。ボスフロアは存在しない。ショップでは好きなアイテムを一つ無料で貰える。攻撃武器を持ち込んだり、ちんたらして曲が終わってしまうと自害する。
・モンク
金を拾うと自害する修行僧。敵の倒し方にまで気を配る必要がありその難易度は極めて高い。脳味噌を「モンク脳」にすることが重要かつ必要。ショップでは好きなアイテムを一つ無料で貰える。
・ドリアン
1マス飛ばしで移動する靴を強制で装備しているケイデンスの父親。初期装備は充実しているが1マス飛ばしの靴が極めて厄介で「コイツ使えねえ!」の罠にハマることもしばしば……
・メロディ
専用武器を持つケイデンスの母親。ストーリーが存在する。例によって武器を持ち込むと自害。専用武器自体はかなり強いものの(移動時に攻撃判定が行われるトリッキーな範囲武器)移動しなくてはならないというのが難点と言えば難点。囲まれると逃げ道無し。
・アリア
ケイデンスの祖母にして、武器がダガー固定、リズム外すとミス、曲が終わったら自害、武器を持ち込んだら自害、体力が僅か0.5でミスすると死亡というとんでもないマイナス能力を持つ超高難易度キャラ。ストーリーが存在するもクリア出来なかったのでどんな話かは筆者は不明。一応ポーションを持っているので実質2ミスで死亡するキャラだがそんなことは気にならないほどに難しくよく死ぬ。店のアイテムもなぜか2つしか出ない。
・ボルト
最速のあの男にあやかってかリズムが倍速。最初から槍を持っている。
・コーダ
アリア、ボルト、モンクの特性を併せ持つ鬼畜の所業のようなキャラ。アリアがクリア出来ていないので詳しいことは知らんが人間辞めないとクリアすることなど不可能な予感がプンプンする。もしかすると、こんなキャラを生み出したBrace Yourself Gamesこそがもっとも鬼畜だったのかもしれない……


~他の機種ってどうよ?~
オリジナル版から遅れて登場した日本版家庭用移植版。自分がプレイしたのはこっちなのでむしろ本家を知らない状態だが、それでも「これは傑作だ!」と思わせてくれるほどの作品だったように思える。PC版との細かい差異もあるのだろうが、手軽に遊ぶのならPS4/VITA版も十分にアリだ。
PS版に採用されている大きな違いは、発売元となったスパイク・チュンソフトのキャラのアバターでプレイできることだろう。シレンやモノクマなどがダンジョンをうろちょろする様は必見。また、ダンガンロンパとグルーヴコースター3の楽曲が収録されており気分を変えてプレイすることも可能。好きな音楽でプレイするのもまた一興だろう。逆に痛いのはカスタムサウンドトラックが無いこと。オリジナル版には普通に採用されているのがちょいと悲しいところだ。
コンシューマから少し遅れて出たiOS版であるが、むしろこれが完全形だったんじゃないの?とまで疑わしくなるほどの充実ぶり。iTunesを使ったカスタムサウンドトラックを実現させ、PS版に搭載されていた要素は全て据え置き。果ては値段まで安い(600円、ちなみにPS版はクロスバイで2機種買えるにしても1,800円+税とそれなりの値段)と大盤振る舞いである。
自分がVITA版を選択したのは「それしかハードを持ち合わせてなかった」ということもあるが「ボタンで操作したかった」、と言うのもある。しかし安価で大盤振る舞いのiOS版の存在を考えるとそんな熱心にPS版を推すか? という気分にもなってしまう。またオリジナル版の方が気になるという人もいるだろう。とどのつまり悩んでるなら「全部買え」と言うのが正しい選択なのかもしれない。あっでも快適にいつでもどこでもプレイしたいというならVITA版、結構おススメです。



0 件のコメント:

コメントを投稿