2016年9月15日木曜日

今月の一本 シルバニアファミリー おとぎの国のペンダント

早くも定番コーナーと化しているのか、それともテンパった駄文をとりあえず書いているだけなのか、というわけで当の本人も記憶があやふやな新企画「今月の一本」はまさかの2回目に突入。今回ご紹介するのは過去にもネタにした「シルバニアファミリー おとぎの国のペンダント」。よりによってこれかよ!と思わないでもないが、ここ以外で全くと言っていいほど取り上げられることがないのだから仕方がない。いまやエポック社と言っても「エポック社ってゲーム出してるんすか?」「ドラえもんの名作があるところか」「あーガントレットレジェンド出してたところだね!」「R-TYPEDXのとこだろ?」「ああ一時期ファルコムのゲーム出してたとこだよね!」「カセットビジョンのきこりの与作が泣ける」なんて意見しか聞かないぞ(後半偏りすぎ)。ここは一発エポック社の看板タイトルであるシルバニアを知ってもらいたいもんである。
…なんて言っても当の本人もあんまシルバニアファミリー知らねえんだけどな。ゲームでの知識しかないし。そもそもエポック社自体も名作ばっかり出してたメーカーってわけでも無く割と謎めいたゲーム出したりしてたからな。もしかしたら今作もそんな部類の作品かもしれん。うーむ。なんだか急激に不安になってきたがとにかく値段が安いから皆さんもプレイしなさい(命令)
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DATA
発売 / 開発 :エポック社 / M.T.O INC.、ロックス
登場時期 : 1999
ジャンル : RPGアドベンチャー(私的仮称)
機種 : GB/GBC


~エポック社看板タイトル来たる!~

RPGと言えば泣く子も黙る人気ジャンルであることは周知の事実。そんなRPGも数が膨大になるにつれてジャンルの細分化が進むようになりもはやその線引きはよく分からなくなってきた感じもある。ドラクエのようなオーソドックスなものからアクションRPG、オープンワールドRPG、ジュブナイルRPG、果てにはあたしのためのRPGなんてものすら登場した。
そんな大人気RPGであるが、中でも非常にニッチなジャンルとして「戦闘の無いRPG」なるものが存在している。moon、エンドネシア、チュウリップなどきわめて個性的なこの手のジャンルの作品を生み出したラブデリック及びそこから分家した会社が手がけたことにあやかり「ラブデ系RPG」なんて呼ばれ方をすることもある。戦闘の無いRPGとして名高いイーハトーヴォ物語もこのジャンルであり最も古い作品(だと思う)であり実は年季の入ったジャンルでもある。
ダラダラと長くなった。今回紹介する『シルバニアファミリー おとぎの国のペンダント』もそんな戦闘の無いRPGと言えるだろう。数々の名作と凡作を送り出してきたエポック社だが自社の看板タイトルでもあるからか、その気合の入り方は尋常なものではなく、それに応えるようゲームもしっかりと作られた万人向けの良作である。エポック社の魂がこのゲームには詰まってる! 過剰なシルバニア愛を感じ取れ!(シルバニアファミリーを紹介するテンションじゃねえよ

~ほのぼの村生活~

今作は戦闘の無いRPGだがじゃあ何するのよって話になるのは至極当然。具体的には困っている人の悩みを解決したり元気のない花をイキイキさせていくことで経験値がたまりレベルアップするという構造になっている。前者はともかく後者は納得し辛いと思うが、ようせいさんの力でその辺は上手いことやっているのだろう。レベルを上げていくことで主人公であるアイボリーのウサギちゃんの行動時間が伸びていく。初めは家と学校の往復だけで一日一日が終了していく淡々とした悲しい生活だが次第に村の人々との交流も出来るようになっていく。果てには洞窟を散策したり気ままに釣りをしたりとのんびりとしたスローライフ生活を送ることが可能。アグレッシブに行動すればするほどその生活もどんどん身のあるものになっていくだろう。世の中やっぱり活動的な方が便利だぜ。
活動の拠点となるシルバニア村はほのぼのとした空気に包まれている。元の原作自体が幼女を対象にしているからか、殺伐とした空気や黒い一面なんかは皆無で常にまったりとした雰囲気である。しかし特徴的なのがそのマップ構造。今作、実はかなり迷いやすく作られている。元気のない花を発見してもそこへ辿りつくのに複雑に配置されたブロック地帯を抜けたりするのに悪戦苦闘。更にはそこに行動時間制限もかかってくる。行動可能時間が無くなる前までに家に帰らないとマズイ!ってことで以外とそのプレイ感触はハラハラドキドキ。しかしこうした心地よい緊張感が伴うプレイとなるので生温いだけでなく適度なバランスだとも言える。特に行動時間が伸びてシルバニア村を探索できる範囲が広がるバランスはこの手の作品の中でも最高峰のバランスだと感じる。惜しいのはこのバランスが対象層の幼女向けでは無かったということか……(結構難しい)。難しいと言えば今作、ミニゲームもあるのだがそれもかなり難しい。特に橋渡りのミニゲーム(リズムゲーム)の難易度は常軌を逸しており筆者は一度たりともクリアすることが出来なかった。しかしミニゲームは基本出来なくてもゲームクリア条件とは関係が無く、やり込みに収まっているのも優しいところ。ミニゲームクリアで経験値がたまるが、それを除いても普通にクリア可能なバランスとなっている。この辺の配慮は流石とも言うべきか。優しい作りである。
今作は一応キャラゲーに分類されるが、筆者がシルバニアファミリーを全く知らぬトンチキ野郎で「メトロイドヴァニアにあやかってシルヴァニアとか出ねーかなー」なんてほざいているどうしようもない人物なのでその作り込みがどの程度のものなのかはあやふやなのだが、非常に丁寧に作られている印象を受ける。それを感じるのがワールドマップ。なんと原作のシルバニア村をほぼ再現しているのだ! と言ってもホントか分からないんだが(意味ねえな)、公式マップなんかと見比べてみてもあるべきところにあるべき施設が配置されている。物量的には続編の2にやや劣るものの抑えるべきところは抑えており、何よりそれがゲームとして破綻せず落とし込まれている。このようなところまで配慮されたキャラゲーはあまり多くなく、開発陣のシルバニアファミリーへの愛を感じるところだ。
また、今作には単にクリアするだけでなくやり込み要素もかなり充実している。花育てや村人との交流での写真撮影、家具の模様替えなど様々なやり込み要素が存在し、極めようと思えばかなり長いこと楽しめるタイトルになっている。本編とはそこまで関係が無いが、スローライフ生活を彩る清涼剤のような働きをしてくれるのも確か。家具の模様替えなんかは原作自体がそういうもん(だと思う。やったことないから分からんが)だからか、かなり凝っており自室を自分流に染め上げるのもポイント高い。ほのぼのとシルバニア村で過ごせるギミックがそこかしこと仕込まれた、良くできたRPGである。

~実はバカゲーかも~

……とここまでは良くできたRPGアドベンチャーだと言うことしか述べてこなかったが、そんなもんじゃこのゲームの深淵を語ったことにはなりませんぜ旦那。なにせ今作には底知れぬ狂気が混在しているのだから。てめえさっきは暗黒面なんて無いなんて都合のいいこと言ってたじゃねえかとお怒りになる方もいると思うが、舞台となるシルバニア村は本当に優しさに包まれたホンワカまったりとして良い場所で狂気は存在しない。それが存在するのは「おとぎの国」である。
遅まきながら今作のストーリーについて語ろう。事の発端は主人公であるアイボリーのウサギちゃんがおとぎの国のようせいさんが怪我しているのを助けてあげるところから始まる。ようせいさんはお礼を言っておとぎの国へ帰ってしまうが、その時ペンダントを忘れて行ってしまう。困ってしまったアイボリーのウサギちゃんはペンダントを持ち帰り、寝床へ着くと夢の中に先のようせいさんが現れる。「あのペンダントは必要なものなんだ! だから返して! ついでにそのペンダントに5時までに家に帰って寝ないとその日の出来事が夢になる魔法がかかっているから気を付けてね!(意訳)」。かくしてペンダントを返すアイボリーのウサギちゃんの冒険が始まる……ってちょっと待てーッ! こんなのただの強迫じゃねえかーッ! しかもこちとらおとぎの国の場所も教えてもらってねーぞ!幼き乙女のアイボリーのウサギちゃんにその日の出来事を夢にするなんて衝撃的な呪いがかかってるとは、もはや血も涙もないようせいさんたちである。ゲームが進行するにつれてようせいさんの暴走もエスカレートしていく。部屋の模様替えの家具はようせいさんから買うことが出来るのだが、これが毎日のように夢に押しかけ家具の押し売りを始めてしまう始末。毎日毎日同じ内容の夢を見させられる破目になるとは……。もはや悪夢のような事態にも思えてくる。
そして驚愕のエンディングが待ち受ける。紆余曲折ありようやくおとぎの国へ辿りついたアイボリーのウサギちゃん。いよいよペンダントをようせいさんに返す時が来た……と思いきやここでようせいさんから一言。「これは、ぼくたちからの最後のプレゼントだよ!」と言って逆にペンダントをプレゼントされてしまう。今までの冒険はなんやったんやーッ!! ペンダントの呪いが解けたような描写は無くおそらくはそのまんま。これがおとぎだと言うのか。これは果たしてメルヘンと言えるのか。メルヘンと言うよりもメンヘル、シルバニアと言うよりもヘルニアと言った方が適切ではないのか。そんなことすら考えてしまう衝撃の展開が待ち受ける。

しかしこんな具合に狂気が垣間見えるもののゲーム自体は至極ほのぼのとした空気に包まれやりごたえのあるRPGとして成り立っている。上のぶっ飛んだ物語もある意味バカゲー的に楽しむことも出来るだろう。一ゲームとして、一RPGとして非常に優秀な作品であることは間違いない。悲しいくらいにマイナーな今作だが中古ショップ等で見かけた時はぜひとも手に取ってほしい。ついでに続編であり今作の正当進化でアッパー版とも言える2やナツメ開発と噂の森の仲間と踊りましょも見かけたら保護に走っていただければこちらとしても幸いである(何が?



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