2017年3月15日水曜日

今月の一本 ブラスターマスターゼロ

今月はこれです。あと今回は紹介文と言うより重箱の隅をつついたただの感想文に近い方向性なのでなんかまとまりが無いっす。スマン。身になる文章が読みたい場合は他のところへ行くのが吉かもです(本末転倒じゃねえか
ちなみにスイッチ版のHD振動とかは未体験。早く体感したいものだ……
��____

DATA
発売 / 開発 : インティ・クリエイツ
登場時期 : 2017
ジャンル : ACT
機種 : 3DS/Switch
今回は3DSをプレイ


��超惑星戦記の復活~
サンソフトというメーカーを皆さんは知っているだろうか。ファミコン時代に他とは一味違うゲームを次々と送り出し、その高い技術力と音楽の良さで多くの人々を魅了したゲームメーカーである。例えばクソゲーの元凶である「いっき」とか! 結局謎がなんなのか分からない「アトランチスの謎」とか! 愉快な歌に反して異次元染みた高難易度の「東海道五十三次」とか!
ゴメン今の忘れて。
ともかく初期は色々アレなゲームを出していたサンソフトだが、中後期になってその真価を発揮し出す。「水戸黄門」で史上初の音声再生を実現し、「ファンタジーゾーン」や「アフターバーナー」の移植で技術力を見せつける。ファミコン後期はその技術力を生かし「バットマン」「へべれけ」「ラフワールド」「ギミック!」「バトルフォーミュラ」など驚異的な完成度とファミコンとは思えない音楽のゲームを次々と送り出し、ユーザーにサンソフトは凄いという印象を植え付けるほどであった。そのサンソフトの覚醒の発端となったソフトの一つが「超惑星戦記メタファイト」であった。88年に出たとは思えない完成度のそれは人気を博し、日本及び海外でシリーズ化されるほどであった。海外での名称はブラスターマスターである(日本でもPS版がこの名前で出てる)。
そんなメタファイトが突如として2Dアクションの覇者、インティ・クリエイツの手によって現代に甦ることになった。それが今回紹介するリメイクであり完全新作の「ブラスターマスターゼロ」である。なぜ今になってメタファイトがリメイクされるに至ったか? それはもう、メタファイトが今なお面白く代用の効かない史上最強、痛快無比のゲームだからに決まっているだろう。あまりにも完璧かつパーフェクトな答えだね。
……と言っても今となっては「メタファイトなんて古すぎて知らねーよボケ」という意見もあるだろう。なにせ88年のFCのゲームだしなあ……。ということでまずは原作について軽く述べておこう。「超惑星戦記メタファイト」はメトロイドライクな探索系アクションゲームである。サイドビューでは広大なフィールドを戦車で駆け巡り、出てくる敵を圧倒的パワーでぶっ壊しつつ、トップビューでは生身でダンジョンへ潜りボスを倒して戦車をパワーアップさせてまた次のステージへ……といったトップビューとサイドビューを組み合わせた作品だ。メタファイトの何が素晴らしかったかというと、これはもう操作感だろう。自分の意志通りに生き生きと動く戦車の操作性の良さはFCアクションの中でも随一! FCで思うがままにこんだけ大破壊大暴走出来る作品なんてごくわずかしかない。生身で挑むトップビューモードもアクションの質が良く練られたバランスで構成されている。
そんなメタファイトだが完全無欠のゲームでも無くわりかし問題を抱えていた。まず物語が不明。次にヒロインが空気。更に戦車の攻撃が届かない敵がウザい。他にもフィールドが複雑怪奇。とどめに超ボリュームにも関わらずセーブもパスワード無し、といったところが挙がるだろう。特に最後のポイントは致命的であり丸ごと保存が使えるVCでプレイするのなら名作間違いなしだが、実機でプレイするのなら理不尽すぎると思ったほどだ。難易度の面でも史上最強クラスの作品で間違いないだろう。メタファイトより難しいゲームはいくらでもあるが、精神面での疲労度の観点から見ればハードルを上げ過ぎた作品だとも言える。
さてブラスターマスターゼロである。リメイクというのはオリジナル版への敬意とオリジナル版とは違う魅力という相反する二つの要素が求められる、実はかなり難しい題材であると思う。しかし! 今作はその二つの要素を見事にまとめあげた、リメイクでありながらも完全新作という記録的な作品である!

��痒い所に手が届くようになった破壊アクション~
今作をプレイして強く感じるのはオリジナル版への敬意。原作を思い出させる8bit風のドット絵を基調としたグラフィックでありながらも更に色鮮やかにきめ細かく描写されたそのグラフィックは懐かしさと新しさが混在する奇妙な感覚を味わえる。奇妙な感覚はグラフィック面だけにとどまらず操作感覚にも現れる。なんと、ファミコンであるオリジナル版と同じような感触なのである。しかし、大きく変化したのはオリジナル版では出来なかった「斜め撃ち」が出来るようになったこと。これによりオリジナル版の快適な操作を引き継ぎつつ更に爽快感を強める作りになっているのが特徴だ。オリジナル版では斜め方向にいる敵に対して懐に潜り込んで照準を合わせて攻撃する必要があったのが、今作では斜め撃ちで一発! 破滅的デストロイアクションを更に強めた今作の作りは流石、数多の2Dアクションを作ってきたインティ・クリエイツの技が宿っている。元々生き生きと動いていた戦車の動きは更に思うがままに動かせるように。オリジナル版ではパワーアップアイテム「ウォール」を手に入れると逆に操作しにくくなるという軽い問題もあったが、ボタン数増加の恩恵を受けて「ウォール」を出したいときだけ出せるようになっているのもポイント高い。
更に注目したいのがサブウェポン。オリジナル版では弾数制であり肝心な時に弾が無い! となったり、ホバーの残量がなくて探索できない! という珍事も起こったが、今作では思い切ってゲージ制に変更。それぞれに分かれていた残弾やホバーも全て一括化。これにより更に多彩なアクションが取れやすいバランスになっているのが特徴だ。また、ゲージが自動回復するようになったのも大きい。これにより残量を稼がないと……という強迫観念から大胆な行動が取れなくなっていたのが、気軽な操作が可能になっている。
メタファイトは確かに名作であったが、FC作品ならではのかったるさや理不尽さも存在していた。それをそのまま持ってきても、プレイヤーは「めんどくせえ」と思うだろう。こういった部分をしっかりと見直し、現代向けにしっかりと最適化しているのは流石としか言いようがない。オリジナル版の評価点はそのままに、改善すべきところはしっかりと改善し遊びやすいように、といったことが完璧に出来ているリメイク作は実は意外と少ない。
遊びやすい調整で言えばオリジナル版最大の欠点であるセーブが無いということが解消されたことが大きいだろう。セーブ搭載というだけでなく、チェックポイントを多く配置してミス後のリカバリーが取りやすくしているのも、またありがたいところである。更に大きいのはマップの追加。これにより広大なフィールドで迷子になることも無く快適にプレイすることが出来る。オリジナル版では無駄に分かりにくかったステージ4突入もこのマップの機能により大安心。更に新たなサブウェポンの追加やライフアップの追加によりオリジナル版に無かったアクションが出来ること、それに加えてそれらを探す楽しさが倍増したのが非常に大きい。探索アクションとしても正当な進化を遂げたまさに痺れる出来のリメイク作だ。
ここまでは戦車に乗り込んで大暴れするサイドビューモードを中心に取り上げてきたが、では、生身でGo! なトップビューモードはどうか、というとこちらも言うに及ばず質の良いものになっている。特徴的なのは攻撃方向の固定が容易になったことだろう。Rボタンを押しておけば射撃方向を維持したまま好きなように動き回れるので思うがままの操作が取れやすくなっている。オリジナル版もAボタンを押しっぱなしで同じことが出来、ボタンが少ないFCで画期的な解決策を成し遂げていたが、やはり多少の無理がありやりすぎると指が痛くなることもあった。ボタンが増えて良かったと思うばかりである。ガンウェポンの仕様が大幅に変わったのも注目ポイント。ショットレベル1~8に応じて攻撃方法が大幅に変化するようになった。オリジナル版にあった遠距離弾やウェーブ弾以外にもオート連射弾や氷を溶かすバーナー攻撃、敵の攻撃を跳ね返すリフレクターなんてものまで登場。これにより攻略の多様化と戦略性を要求される内容に……なるかと思いきや、オリジナル版と同じくレベル8のウェーブ弾さえあれば大体安定なのは少々残念ではあるが、不慮の事故でレベル8ショットを失った時に「うわー! もはやこれまでー!」と死を覚悟して特攻するような作りでは無く、「何かを上手く使えば復活できるんじゃないか?」と希望を失わせない作りはゲーム初心者への配慮も行き届いていて好感が持てる。壁を乗り越えるような地獄の一丁目のような難易度のゲームも確かに面白いが、こういった「誰もが楽しめるゲームバランス」の作品もまた素晴らしいものである。
また、サブウェポンであるボムも追加や仕様変更が行われた。オリジナル版では近距離の敵を爆殺したりボスを抹殺したりするくらいの役割であったが、今作では壁を破壊する物から始まり暗闇を明るく照らすもの、設置すると自動砲撃するもの、戦車の主砲ぶち込むものなど多数のサブウェポンが存在する。これらのサブウェポンは探索要素に華を添え難易度を緩和させるクッションとして作用している。実際後半のボスはサブウェポンを使わないとかなり強い。このようにサブウェポンもすっかり使いどころのあるバランスへと変化したのもまた、痒い所に手が届く作品に仕上がっている。
サウンドの話もここで述べておこう。サンソフト作品は音楽が極めて優れていることで有名でありメタファイトも例外ではない。小高直樹氏によって作られた音楽は今もなお色あせることのないものになっている。ではブラスターマスターゼロはどうか? というと、これまた懐かしさと新しさが混在する出来に仕上がっている。現代風にアレンジされた一面の曲を聞いた瞬間に「うっひょおぉお~!! なんじゃこりゃすげえ~!! 凄すぎるぜインティ・クリエイツ~!!」とあまりのカッコよさに正気を失い5分ほどそこに立ち止まってしまうほどであった。して同時に「絶妙に懐かしい」音色にも気付く。グラフィックが昔懐かしいものを意識しつつも現代風に調整してあるのと同様に、音楽もそこのところを強く意識しているみたいだ。同社の「マイティガンヴォルト」のようにFCを再現するかのような音色ではなく、現代的でありながらも絶妙にそれっぽい感じの音色であるところがイカしたところだ。
楽曲は全編通してアレンジ、というわけでは無くむしろ完全新規楽曲が主だ。しかしそのクオリティは文句をつけるところが無く完璧。手に汗握るボスの音楽からステージの情景を浮かばせるステージ曲まで捨て曲無しといった具合に、山田一法氏の本領発揮といった感じだ。また絶妙にそれっぽい音色はチップチューンで名を馳せる方々の手によるものでもあるらしい。サウンドに並々ならぬこだわりが垣間見えるのもブラスターマスターの特徴だ。サントラが出てほしいものである(個人的願望をここに書くなよ←サントラ発売が決定しました。ありがとうインティ・クリエイツ!
まとめると、つまりこういうことだ。ブラスターマスターゼロはオリジナル版の持つ評価点や爽快感はそのままに追加要素や細かい仕様変更を施し、メタファイトが持っていた魅力的な部分を更に洗練させた作品である……
だけじゃない。
そう、それだけじゃないんだ。これまで(やけにダラダラと)オリジナル版への敬意だのオリジナル版と比べてあーだこーだと話をしてきたが、今作の魅力はそれだけじゃない。今作はリメイクであると同時に完全新作でもある。原作とはまるで異なる、全く違う部分にこそブラスターマスターゼロの味があると言っても良いだろう。むしろこの原作と異なる部分にこそがブラスターマスターゼロを傑作へと押し上げているといっても過言ではない!

��原作とはまるで違う!完全新作「ブラスターマスターゼロ」の神髄~
リメイクでありながら全く違う! と啖呵を切ってしまったが、じゃあ一体何が違うのよ? というと、ギミック! ボス! 物語! この3つである(厳密にはサブウェポンの追加やマップの追加、細かい仕様変更などもあるけどそれらは原作の良さをさらに広げるものであり全く違う部分とは言い難い。音楽は全く違うけれども一応原曲のアレンジもあったので…)。
まずはギミック。今作のステージ構造自体はオリジナル版とある程度似ているが、仕掛けの変化によって同じでありながらまるで違う感覚を味わえる。ステージ3や4ではそれが顕著に見て取れる。3面ではベルトコンベアを走り扉をこじ開けたりステージ全体を動かしたりと大掛かりでダイナミックな仕掛けがあり、4面では下水を流していけなかったところに行けるようにしたりと完全新規アクションと言えるほどに一新されているのだ。無論その完成度は極めて高い。ギミックの数々はどれもこれもが奇想天外でどれもこれもが絶妙に古臭い。そのためここでも「全く新しいのにどこか懐かしい」という不思議な気分を味わうことが出来る。7面のようにステルスアクションの要素を含んだステージもあり、常にアッパーかつ新鮮な気持ちを保てるよう調整しているのも見どころだ。
次にボス。オリジナル版からほぼ一新されかつ数が膨大に増えたのでゲームを更にアツく奥深いものにしてくれている。特に大きいのは戦車で挑むことになるボスも登場したことだろう。オリジナル版ではボスとの戦いは常に生身であり、それはそれで緊迫感もありつつ迫力あるボス戦で楽しいものだったが「せっかく戦車あるんだからこれでボスとの戦いがあっても……」と思わないでも無かった。今作の戦車でのボス戦は生身とは違った駆け引きが求められ、また絵的にも迫力ある死闘が描かれ更に奥深さを深めた。
更には物語。オリジナル版はなにせFCのゲームということもあり、説明書がなければ何のために地底を探索しているかも分からず、ヒロインは最後にしか登場しないと昔感バリバリの作りであった(そこに味があると言えるんだけどね)。しかし今どきのゲームで流石にそれじゃあダメだろう! ということで今作はこの物語に力を入れている。ゲーム開始時のオープニングでは大まかに世界設定や旅立つ目的を示してくれるようになり、新しいステージに入った時には主人公が何らかの台詞を言ってくれるようになり、ボスとの対峙でもボス感に慄くようなセリフを言ってくれる。またヒロインがゲームに綿密に絡むようになったのも嬉しいところ。主人公との掛け合いであったりゲーム攻略に役立つアドバイスであったりとゲーム内での出番が大幅に多くなり、ゆえにドラマ性も強化されキャラへの愛着も湧くような作りになった。
そして、この3つの要素が組み合わさったことによりブラスターマスターゼロは演出が超強化された史上最強痛快無比のドラマチックアクションへと躍り出ることになったのである。今作は演出が凄い! 本当に凄い! プレイ中は全てが名場面と言っても過言じゃないほど、今作は見どころ溢れる作りになっているのが最大の特徴であり原作を知らなくてもこのドラマに酔いしれるために買う価値があるほどだ。例えば5面のトップビューで挑むことになるダンジョン。8bit風味のグラフィックでありながら現代的な処理を施し水面の光の反射と上に居るであろう生物の姿の影が見れる幻想的なフロアだが、先へ進んでいくうちに影の部分で異変が起こりだす。突如現れたであろう巨大生物に蹂躙される一幕が影だけで表現され、ダンジョンの最後にはその影の正体が……といったような怒涛の展開が待ち受ける。ドラマ性の演出では個人的に7面ボスを挙げたい。サイドビュー視点で戦うこのボスはなんと始め戦車を使うことが出来ない状態からスタートする。そしてこちらの攻撃は一切通用しない、まさしくどうにもならないどうしようもない絶望的な状態で戦闘が始まる。しかし、ステージ内のギミックを作動させることで別の場所へ設置していた我らの戦車がこちらへと降りてきて、そこからは形勢逆転と言わんばかりに大破壊を行うことが出来る。この、愛車がなければどうにもならない強さ、愛車登場後は雑魚になるという逆転劇の演出は本当に見事だったとしか言いようがない。これほどまでに原作のことを理解して、その上でプレイヤーの魂をアツく燃やすような演出を仕込むなんてのは普通のゲーム会社に出来るようなことじゃない。インティ・クリエイツがいかにゲームバランスや演出を考えて作っているかがよく分かるワンシーンだ。
とどめに何もかもが新規に作られた最終ステージの存在。こればかりは何を話してもネタバレになってしまうので細かい話は出来ない。しかし、「史上最強のドラマ」が君を待ち受ける、ということだけは保証しよう。押し寄せる怒涛の物語展開、何が起こるかまるで分からないステージ構造、最後に待ち受ける予想だにしないラスボス……。エンディングでは原作メタファイトプレイヤーをホロリとさせる一幕を見せ、そしてリメイクであると同時に完全新作であることを実感させるそれはこれまでの激闘が報われるものだ。最終ステージの展開はこれを見るためだけにプレイする価値があると胸を張って言えるほどだ。間違いなく2017年上半期、最もアツい2D大破壊大暴走アクションであろう。まさに超惑星戦記! な完成度を誇る今作、幸いにも価格も手ごろなものなのでプレイしてもらいたいものだ。



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