2016年7月12日火曜日

ロゼと黄昏の古城 感想

あまり関係の無いことをうだうだ書き連ねるのもアレなのでシンプルにいこう。今作は日本一ソフトウェアが送り出した…いや、日本一ソフトウェアに所属する古谷優幸ディレクターが送り出した探索アクションゲームである。所謂作家性が前面に押し出されたゲームの一種であることが特徴的だ。


言ってしまうが実質的前作に当たる『ホタルノニッキ』はダメなゲームだった。ゲームを構成するグラフィック、ゲームシステム、レベルデザインなどどれも優れていたがプレイヤーの配慮に欠けた調整とかみ合わせにより終始イライラが止まない&エンディングもパッとしないという、光るものはあるし、面白くはあるが、遊んでて高揚感を感じず苦痛に顔をゆがめながらイライラを溜める救いようのないゲームであった。だからこそ『ロゼと黄昏の古城』もプレイする前は非常に不安が大きかった。もしかしたら『ホタルノニッキ』の二の舞で終わってしまうのではないか…、そう思っていた。
しかし『ロゼ』はそんなちゃちな不安を消し飛ばすほどの魅力と楽しさ満ち溢れた良作であった。どころか2Dアクションゲームとして見てもかなりハイレベルな作品であった。


まず声を大にして言いたいのは今作がしっかりとした古谷ゲーであるということだ。と言っても古谷Dの関わった作品は自分の知る限り『ホタルノニッキ』と『ロゼ』しか知らんのだが……。それはそれとして、その特徴を述べると
・主人公が女の子で凄惨な目に合う
・可愛らしいのに不気味、グロくてポップ
・徹底して寡黙な物語
・独特な空気感質感を持つグラフィック
・死んで覚える謎解きゲームバランス
といったことが挙げられる。そして『ホタルノニッキ』で問題点として挙げられることの多かった操作性の難と結局話がよく分からないという点に対してメスを入れてしっかりと改善を図っている。『ホタルノニッキ』で不満大爆発だったところがほぼ抹消されて大満足!と言ったところ。


ゲーム内容は前作と大きく異なり2キャラ操作のアクションゲームになった。か弱い女の子ロゼと丈夫で力持ちの巨人を操作して謎を解きつつ舞台である黄昏の古城を探索していくことになる。
ロゼが出来ることは
・赤色のオブジェクトから色を吸い出すことが出来る
・白色のオブジェクトに赤色を戻すことが出来る
であり、対して巨人が出来ることは
・ロゼ、及び投げることが可能な赤色オブジェクトを投げ飛ばすことが出来る
・ロゼが死んでしまうギミックで死なない
ことである。またオブジェクトの性質として
・白色になったオブジェクトは動かすことが出来ない(その場で静止する)
・赤色のオブジェクトは前述したとおり動かすことが可能
が挙げられる。基本的にはこれらの道具を用いてステージ間の謎を解き先へ進んでいくゲームとなっている。また、応用として血のジョウロやタルなども登場するが面倒なのでここでは割愛。

ゲームバランスは非常に良質だと感じた。何をすればいいか謎が解けるか、考えればハッと思いつくように考え抜かれたレベルデザインは『ホタルノニッキ』から更に昇華されており、また緻密かつ慌ただしいな操作を要求される場面も大幅に減少されたのでイライラ度合いを減少させ歯ごたえは残している。とてもじゃないがあのイライラ鬼畜ゲーの『ホタルノニッキ』のスタッフの作品とはとても思えない。非常に優れた調整と言えるだろう。また、ロゼと巨人の使い分けのバランスの良さもポイント。ロゼは即死してしまうので慎重な操作が求められる一方巨人は落下死以外は基本的に無敵なのでスイスイ進める。しかしステージはロゼを使って色を入れたり抜いたりすることを主軸にした謎解きが多く、2人での協力がカギとなる。この協力具合が非常に良く出来ていて上手いバランスになっている。片方だけでイケイケGoGoなんてことには絶対にならない。そして、その協力から生まれる2人の絆が物語表現もこれまた良く出来ている。


物語について。
相変わらず寡黙。徹底して台詞を使わせない、絵だけで伝えることに徹している。この物語方法はやはり個性的かつ独自性が非常に強くハマれば最高となる一方、分かりにくいことも難点として挙がる。ただそれでも前作に比べればかなり分かりやすくなっている。そのアシストをしたのが古城に残された本や手紙。これのおかげで世界観への親しみを自然な形で持つことが出来、寡黙な物語表現の補佐をしてくれている。
特徴的なのはそれらの世界観の補佐をする題材となる本や手紙、血の記憶などは時期系列などもかなりぼかされていること。つまりはそれらの題材からプレイヤー自身が「これってこういうことなのかー?」と想像し、頭の中で情報の再構築を行うこともゲームに含まれていることである。ゲームをしていない(というよりは操作をしていない)時間もその世界観に思いを馳せ理解を深められるということにも着目し狙ってそうしたゲームは意外と少ないように思える。個人的にはこういうゲームをやってみたかったこともあり大いにハマった。


グラフィックと演出について。
まず目につくのは一つの映像として非常に完成度が高いこと。モノトーンと赤を基調とした全体として非常に統一性のあるものになっている。非常に幻想的で、美しい。その一方で統一性が強すぎることの弊害として、絵的な衝撃はプレイが重なるたびどんどん薄くなる。どこをどうほっつきまわっても似たような背景だし。血の記憶や後述する残虐要素で飽きを減らそうとしている努力は感じるものの、途中でグラフィックへの興味が薄まってしまう人も出てきそう。
今作の特徴とも言える残虐描写は、かなり疲弊度が高い(つまりはかなり良い出来)。ロゼはストーリーの都合上とゲーム的な理由で何度も死ぬことになるが、そのたび血がビチャっと出るので慣れてない人はかなりキツイ。ストーリー上では数々の拷問器具によって処刑されることになるが、これもまたキツイ。特に肉が潰れるような音のSEが非常に良く出来ていて、精神的に参ってくる。クリアにここまで時間がかかったのもこれが原因と言っても過言じゃないだろう。だが、あくまで可愛らしい絵柄に反して、のギャップ効果がもたらしている影響が大きくリアル調のゲームと比較すれば残虐度合いは雲泥の差でありそっちを期待する人には「意外と大したことないじゃん!」と思われてしまうかもしれない。そこはまあ見た目に反して凄惨、ってことで。
物語の演出に関しては先述したが、ロゼと巨人の関係性の深まり方を上手い感じに描写していると感じた。実際キャラを動かして伝わってくる物語と小ムービー的なもので描写される物語との間に開きも無く良く出来ていると思う。が、セリフは皆無なため最終的にはプレイヤーがどう感じるか、ということになる。


音楽について。
あくまでBGMとして補佐に尽くした感じの強い音楽をどう捉えるか、ということになる。ので、この辺は好みの問題。個人的にこりゃ良いな!と思える音楽はラストステージとラストバトルが挙がる。それ以外はボチボチ、と言った感じ。悪くはないけどね。あくまで補佐に尽くしたって感じっす。


ここまで結構べた褒めしてきたが問題点が無いわけではない。まず巨人の掴みやオブジェクトの挙動が不安定な点。作りが甘いのかかなり動作が微妙…というかなんとも言い難い箇所がプレイすると出てくる。巨人の掴む範囲がやけに広かったり、目の前に置くはずのものがずれておかれたりと不安定気味。この辺はなんとかならんかったのか、と思った。それに次いで謎解きもその影響を受けて変な部分で難易度を上げてしまっている。今作の難易度自体もそれなりに歯ごたえのあるものなのでその辺のチューニングは頑張ってほしかったが……
あとはどう足掻いても間違いなく人を選ぶ作品であること。個性の塊のような作品で尖りまくっている。そのため合う人は合うが合わない人には何が面白いのかすら分からないような作品とも言える。与えられた情報から物語を頭の中で再構築する能力、もっさりとして爽快感のかけらもない操作感を重厚と受け入れられるか、何度も血を吐き散らして息絶えて逝く少女を見続ける精神力があるか、など人を選ぶポイントは枚挙にいとまがない。それでいて値段が多少割高なのも悩ましいポイントか(自分はホタルノニッキとセットのDL版を買ったので割高感は無)。定価の価格設定は頑張った方だが、それでももう少し身の丈に合った値段でもよかったのでは…?と人を選ぶゲームなだけに思えた。個人的には定価で買っても後悔しないほど面白かったが……


しかしそれでも自分は今作が非常に面白く楽しく良くできたゲームだと感じた。他では味わうことの出来ないものが『ロゼ』には含まれていると思う。分かる人には分かる…そんな至高の作品に仕上がった良作だ。興味の出てきた人はまずは是非とも体験版をプレイしてみてほしい。



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