2016年11月8日火曜日

今月の一本 VVVVVV(日本版)

今月のオススメゲームはこいつです。これが500円ってのも流通のゆがみなんだかいい時代なんだかよく分からないね……
それはそうと今回から一応カテゴリを設けてみることにした。というかいったんカテゴリの見直しとかやった方がいいのかねー。自分で備忘録的に使うときは雑記に放り投げでも困ってはいないんだけど……
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DATA
発売 / 開発 :pikii / Nicalis、Terry Cavanagh
登場時期 : 2016
ジャンル : 2D即死系アクション
機種 : 3DS



��おなまえなんてーの?~
VVVVVVはTerry Cavanaghが制作した2D即死アクションゲームである。海外のインディー界にその名を轟かせ、日本でも知る人ぞ知る著名なインディーゲームと言っていい作品である。有りそうでなかった重力反転を利用したシンプルなアクションとレトロゲームを意識したグラフィックと音楽、そしてトゲの脅威を混在させ高い次元でまとめ上げた偉大なる傑作である。
VVVVVVが優れたゲームであるのは明白な事実ではあったのだが、こと一つだけ敷居を高める要素があるとすれば言語の問題であった。確かに単純なアクションゲームであり、文字が理解出来なくても楽しめるものではあった。しかし登場人物たちの会話やステージ名を理解出来なくてはその面白さを全てを理解出来ない。これはしがないゲーオタには由々しき事態である。
この事態により大流行りしていたりサントラがめちゃんこ良かったりしていて好評を聞いてはいたものの自分は見逃していたが、時も2016年、実に登場から5年強過ぎてしまったが遂にローカライズされ国内に躍り出ることになった。ローカライズ担当のPikiiによるその徹底したローカライズはまさしく究極的なものであり、遂にVVVVVVの全てを楽しめるときが来たのだ!
ちなみにゲーム界屈指の難読タイトルの今作であるが、海外では「シックスブイズ」と呼ばれているし日本でもチラホラそう呼ばれ始めているのでここでも倣わせて頂きます。でも好きなように呼べばいいと思うよ(俺が決めることじゃないけど……

��VVVVVVery exciting! and VVVVVVery hard!~
VVVVVVを知らない人のためにもかいつまんで今作の内容を説明しよう……といっても、まあ所謂死にゲーである。そりゃもう、見ればわかる。至る所にちりばめられたトゲ、トゲ、トゲ。あそこにもトゲ、トゲ、トゲ。どこを見渡してもトゲ、トゲ、トゲ。もちろん触れれば即死。こうした極限状況の中を潜り抜ける、由緒正しき死にゲーである。レトロを意識したグラフィックにサウンド周りも特徴で死にゲーの基本を押さえていると言っても良い。非常に統一感のある、シンプルなデザインが特徴的だ。
今作独自のアクションは「重力操作」である。このゲームはジャンプが存在しない。しかし空中制御によりトゲを回避することを要求される。んじゃあどうやって宙を駆け巡るのよ、という解が、コレ。通常重力は下にかかっているが、ボタンを一押しすると重力の向きが上になる。これにより上方向へ主人公はすっ飛んでいく。そして天井へ張り付く。この「空へ落ちる感」は2Dではあるものの「GRAVITY DAZE」のような「落ちる」楽しさがある。なるほど。初めは「ジャンプじゃねーのかよ!そんなん死にゲーでは扱いにくくない?」なんて思ってはいたものの、本編をクリアした今ではこれほどハマっている操作系は無いとすら思える。ボタン一つで空中かっとび!トゲとトゲの間を縫うように動き超速でステージを駆け巡る快感!これこそがVVVVVVの醍醐味だ。
そう、VVVVVVの魅力はこのスピード感だ。今作は死にゲー屈指のテンポの良さを誇っている。全体的なゲームスピードが速く、加えて主人公の移動速度も高速。そのため死ぬ速度も超速だったりする。復活したと思ったらその2秒後には死んでいるなんてのは日常茶飯事。しかしチェックポイントが至る所に設置されているから安心&復活も高速で即座に難所に挑むことが出来る。高速で宙を舞い高速であの世へ旅立ち高速で復活して高速でトゲを潜り抜け高速で敵の動きを見切り高速で死に高速で蘇り高速で次の部屋へ向かう。この高速感こそがVVVVVVの肝だ。無駄なものを一切取り除いたその純度は極めて高く、その中身は驚くほどに過激過剰。次々と針の穴に糸を通すような極限状態の死闘が次から次へと襲い掛かってくる。しかし不思議と理不尽さは無い。それはやはりゲームバランス、レベルデザインの組み立てが上手いからであろう。チェックポイントが多く置かれていることもさることながら、過度なゲームスキル反射神経精密動作を要求される場面は少ない。やり込み要素のアイテム収集を考えなければその難易度はじっくり挑めば必ず道が見えるレベルの物であろう。そして今作の再プレイ性は超スピードの影響により非常に高い。そのため一度や二度の失敗で諦めることなく「クソッ!次こそは!」と闘志を燃やして挑戦することがやりやすい。シンプルながらもアツいプレイが楽しめるのはやはり練りに練り込まれたこのバランス調整の良さにある。一歩間違えれば理不尽ゲー一直線にもなりかねないこのジャンルでこのレベルのものをよく作ってきたな!と感服するほどだ。
加えて評価の高いポイントがそのステージのバリエーションだ。今作はワールドマップからいくらかのエリアに別れたステージを自由に探索攻略していく、いわば軽いメトロイドヴァニアのような作品でもあるのだが、各エリアごとに特徴的な仕掛けが登場するような設定になっている。ギミックとしては触れると強制的に重力の向きを変えるワイヤー、移動する床と天井、更には上下左右が繋がる擬似固定画面アクションとなるステージもあり、これらが複合されたものも無論登場し終盤はこれらをふんだんに使った凶悪なステージが待ち受ける。また、各エリアクリア後に独自のルールで挑むステージの存在もあり、中にはワイヤーを上手く利用したミニゲーム(グラビトロン)までも登場する。次から次へと新たなギミック、新たなルールでの戦いが続く過激なゲームではあるがその分一瞬たりとも飽きさせない。ジェットコースターのような疾走感のまま突き進む、キレのあるバランス構成だ。
また死闘激闘を彩り支えてくれるのが、ちょっとだけ先述したサウンドの良さだ。Magnus Palsson氏(正しくはPalssonのaの上に○)によるレトロを意識して作られた音楽はまさに圧巻の一言。死にゲーにおいて音楽は非常に重要であるのはご存知の通り。音楽という潤滑油が無ければ気の遠くなるような死闘も楽しく乗り切ることは出来ず、また音楽が優れているからこそどんなに難しくても挑んでみようと思わせるものなのである。その点VVVVVVの音楽は聴いた瞬間一発合格。他にはない独自性を保ちつつもどこか懐かしいあの古き良き死にゲーが多かった時代を彷彿とさせるような音色と耳に残り思わず歌いだしてしまうようなキャッチーなメロディ。全曲捨て曲がないとまで言えるほどの完成度の高さだ。特に「Positive Force」のインパクトの高さは特筆すべきだろう。ラストステージなど極めて印象的な場面で流れるこの楽曲は、VVVVVVの代名詞と言っても過言ではないほどのインパクトを持ちその驚異的なステージの数々を彩り衝撃を強めてくれる。音楽面を取ってみてもVVVVVVは至極の一品だ。
ここまで褒めちぎってしまったが、そうは言っても超難易度のゲームなだけにやはり人を選ぶ感は否めない。理不尽な思いを胸にして途方に暮れることもあろう。しかし、1ミリの狂いもない操作と0.1秒の狂いの無い判断を繰り返し、超速でステージを駆け巡りそして死にすぐさま復活する、これを繰り返していくうちに次第にある高みへと到達することが出来る。そしてその高みへと到達したとき、難所を突破しこの世のものとも思えぬ快感を享受することが出来るゲームであることも事実だ。自分で試行錯誤して何かを掴みとったような感覚、何かを成し遂げたというこの感覚に勝てるものなどあるのだろうか。VVVVVVは死にゲーとしてのゲームとして正しき姿の作品だ。苦行のような道のりの果てに確かに手に残る何かを掴み取りたい人は手に取ってみてはいかがだろうか。

��独自要素がアツい!3DS版の魅力~
……とここまで全く物語部分とローカライズに触れぬままVVVVVVの紹介をしてしまったが本題はこっちだ!なぜ今更VVVVVVを取り上げるに至ったかと言えばそれはひとえにこのローカライズの部分に他ならない。なんてたってこれでようやく本作の物語とかが理解できるようになったのだから。
今作の物語は「宇宙船の事故で異次元に飛ばされたヴィリジアン船長と5人のクルーたち。プレイヤーはヴィリジアン船長となって、今にも崩壊しそうな次元の原因を探りながらはぐれてしまったクルーたちを探しだせ!」といったものである。よくある話、と言えばそうなのかもしれないがその物語の質は非常に高いものだ。それは個性あふれるキャラクターのおかげといってもいいだろう。船長含め6人のV達は見た目こそクリソツだが喋り方や性格などが短い会話文からにじみ出ていて強烈な個性を生み出している。どのキャラも魅力的で、助け出したくなること間違いなしだ。死にゲーは基本的にその阿鼻叫喚の難易度のみが取り出されがちな印象があり、物語性などの部分は希薄に感じられてしまうものがあるのが難点と言えば難点ではあった。今作はプレイ時間としては約3時間ほどでクリア出来るもので、重厚で長い物語ではないことは確かな事実だ。しかし、今作の物語はプレイ中飽きさせない圧倒的な濃密さを誇る。ストーリーは長ければいいというものではない。そういう意味ではグイグイと引き込まれ短い間に強烈な体験とともに刻み込まれる良質な物語は一発合格物だろう。
このように魅力的な物語も確かに今作の味ではあるが、今作の真価はそこではない。ローカライズの本気がうかがえるのはフロア名だろう。今作、各エリアのステージは多数の部屋から構成されているのだが、その部屋には部屋名が付けられており、そしてこの部屋名こそが今作を傑作へと押し上げた要因の一つだ。名は体を表すと言う。今作以上にそれを表現できているゲームはほとんど無いように思える。部屋名は全体的にセンスの良い洒落ていながらもノリが軽妙なものに仕上がっているのだが、恐ろしいほどにこちらの感じた感情、心理を突きに突きまくったかのような名前が多いのだ。例を挙げれば―「トラック センタク」と付けられた部屋に二つの分岐点、どっちを行くかで運命が決まるッ!というテンションで分岐を選択すると次の部屋では「ソノ センタク……オキノドクニ」という部屋名とともに地獄のような難しさ、そしてもう一方の方は意外と簡単そう……あの時あっちを選んでいれば…ッ!―といったようなことがしょっちゅう起こる。だんだんトゲのギミックよりも部屋名の方に注目が行き、ちょっとした息抜きと楽しみになってしまう。地獄絵図を楽しいものに変えてしまう。その変え方とセンスの良さには驚くばかりだ。特に秀逸だと思ったのが、「アエテ カコクナ ミチヲ イケ」にあるトリンケットを取るために苦労することになる一連の部屋。その難易度はまさに恐悦至極で何度も投げたくなるところだが、そうしたこちらの心理を読んだ「ナミダノ アジハ… ウマイ!」という部屋や「イージーモード カイジョ」という部屋の存在がまたクスリと笑わせてくれる。このような気の利いた部屋名が無ければ速攻でブン投げていたことだろう。このハイセンスな部屋名こそが今作の味であると思う。本編ラストの部屋名は今作屈指の何かこみあげてくるものがある、感動的な場面の一つだ。
今作のローカライズは非常に張り切りまくっていて、このような会話や部屋名に至るまで徹底した日本語化が行われているが、そこだけにとどまらないある種徹底しすぎたローカライズも魅力の一つだ。代表例としては序盤に登場する「ザ・イエスマン」であろう。その衝撃的な見た目から「そんなところまでローカライズするの……」と思ってしまうこと間違いなし。しかしやりすぎで何が悪い!こうしたやりすぎな遊び心も残されているのが愉快なところだ。
また、3DS版の恐るべきところは本編以外にも海外ゲームデベロッパーによってデザインされた追加レベルが収録されていることだ。この追加レベルも極めて良く出来ている上に、完全日本語化に対応。本編と対比して悪乗りが進んだぶっ飛んだストーリーや部屋名を心行くまで堪能することが出来る。追加レベルの種類はなんと18。更に本編と遜色のないボリュームを誇るものすら存在している。本編が終わっても長く楽しむことが出来る。

まとめるとこうだ。3DS版VVVVVVは元々ただでさえ完成度が高かった即死アクションを徹底的にローカライズし、更に完成度を増した3DS至高の死にゲーである。今からでも遊ぶのは全然遅くはない。VVVVVVはいつでもあなたの挑戦を待っている。
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※補足
3DS版にも問題が皆無ってなわけでも無く、本編クリア後トリンケット絡みでの強制終了バグが残っています。これで本編の面白さにケチがつくってほどのもんでもありませんが、注意すべし。パッチの登場が待たれますな……



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